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位相補正実験REV法の目的の1つとして、設定位相の初期値を補正して、APAAの利得を最大化することができる。この実験を2012/7/23 (RX-1実施)及び2012/9/6 (TX-2実施) にJAXA筑波とNICT鹿島間で実施した。試験の評価方法はビーム設定のための移相器の位相を鹿島方向にビームを指向させたときの方向余弦から求める方法(通常のビーム指向方向決定方法)とREVの初期位相に補正位相を加えた場合の受信レベルを比較した。測定は位相を固定した状態で1分間連続波の受信レベルを40 msごとに取得し、平均化処理を行った結果をグラフ化した。図24、25はRX-1の鹿島局の受信結果であり、方向余弦を用いてビームを設定した場合とREVの補正位相でビームを設定した場合をそれぞれ示す。この結果、前者の方が0.13dBレベルが高い。これはRXビームの場合、送信地球局が筑波であるため、補正を行うとAPAAのRXビームは筑波方向の利得が最大になるように補正されるため、鹿島方向の利得が低下することで説明できる。このため、APAAの受信アンテナの位相補正は鹿島から試験信号送信する必要がある。一方、図26、27はTX-2の鹿島局の受信結果であり、方向余弦を用いてビームを設定した場合とREVの補正位相でビームを設定した場合をそれぞれ示す。この結果、鹿島方向のレベルが方向余弦でビーム方向を設定した場合よりも0.23dBレベルが高く、利得向上の効果がわずかながら認められた。これはTXビームの場合、受信地球局が鹿島であるため、補正により鹿島方向の利得が向上することで説明できる。むすびWINDS APAAの健全性評価としてREV法を適用とすると、軌道上REVの固有の課題がある。この課題は、衛星上のREV実施時の素子位相の回転タイミングと地球局の計測タイミングが同期していないこと、及び大気のゆらぎにより受信信号の変動が大きいことである。前者は1つの位相設定の計測期間に同じ測定を2回行うこと、後者は得られた1回の測定で得られた1024個のデータの平均化処理と最小二乗法によるスムージング処理により課題を解決した。本REV試験は2008/10/9から2017/2/6までの間で合計19回実施してトレンド評価を行った結果、全ての素子の振幅と位相は初期の値をほぼ再現しており、WINDS APAAの健全性が確認された。また、APAAの位相補正実験の結果、わずかながら利得の改善効果が認められた。67 122.0122.2122.4122.6122.8123.0123.2123.4123.6123.8124.00100200300400500600700800900100011001200130014001500相対振幅(dB)測定ポイント平均振幅:123.56dB図24 方向余弦によるビーム設定(RX-1)122.0122.2122.4122.6122.8123.0123.2123.4123.6123.8124.00100200300400500600700800900100011001200130014001500平均振幅:123.43dB測定ポイント相対振幅(dB)図25 位相補正によるビーム設定(RX-1)123.0123.2123.4123.6123.8124.0124.2124.4124.6124.8125.00100200300400500600700800900100011001200130014001500相対振幅(dB)測定ポイント平均振幅:124.04dB図26 方向余弦によるビーム設定(TX-2)図27 位相補正によるビーム設定(TX-2)123.0123.2123.4123.6123.8124.0124.2124.4124.6124.8125.00100200300400500600700800900100011001200130014001500相対振幅(dB)測定ポイント平均振幅:124.27dB124 情報通信研究機構研究報告 Vol. 63 No. 2 (2017)3 超高速衛星通信技術
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