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まえがき衛星通信は航空機の飛行時、洋上及び大規模災害が発生した場合、携帯電話等の地上系の通信インフラが使用不可の場所・場合において有効な情報通信の手段となる。特に一刻を争う災害時においては、動画像、地形データ等の被災地の情報をリアルタイムで共有するなど大容量の通信が望まれる。また、平常時でも旅客機内でのエンターテイメント利用など、通信容量の増大化傾向は止まらない。NICTではWINDSの研究を行っており[1]、移動体衛星通信の研究として衛星を自動捕捉、自動追尾可能なアンテナシステムを搭載しており、走行しながらWINDS衛星との通信が可能な小型車載地球局[2]、洋上での通信可能な船舶用地球局[3]を開発し、実験・運用している。ここでは、飛行時の衛星通信の研究を行うため開発した航空機地球局の概要及び開発した航空機地球局を実際に航空機に搭載して行った飛行実験[4]–[6]について述べる。WINDS航空機地球局航空機地球局の諸元を表1に、構成図を図1に示す。アンテナは図2に示す開口経45 cmのカセグレンアンテナを用いており、利得は送信38.7 dBi、受信36.1dBiとなっている。200 Wクラスの大電力増幅器(HPA)、低雑音受信周波数変換器(LNC)及び変復調器などで構成されている。航空機地球局に搭載されているアンテナシステムはGPS受信機から得られる自局の位置情報と慣性航法装置(IRU)の情報から衛星と自局の位置関係を計算し、アンテナ制御部(ACU)よりアンテナの指向方向を制御することで衛星を自動捕捉、自動追尾を行う。また、追尾誤差が大きくなった場合や衛星からの信号を受信できない場合には干渉対策のため送信を止める(インターロック)機能を有している。飛行実験3.1 実験概要WINDS航空機地球局は図3に示すダイヤモンドエアサービス社のGulfstream-II[7]に搭載した。機内には地球局のほかに受信レベル測定用のスペクトラムアナライザ及び伝送試験用PC、ログ収集用PCを設置した。図4に機内の地球局及び測定装置の設置状況を123表1 航空機地球局諸元送信周波数27.5-28.6 GHz受信周波数17.7-18.8 GHz,18.9 GHz (Beaconを受信)偏波直線偏波(V/H)アンテナカセグレンアンテナ開口経:45 cmアンテナ利得38.7 dBi(送信)36.1 dBi(受信)大電力増幅器200 W TWTAG/T13.2 dB/Kアンテナ駆動範囲El :25-65 degAz:無限回転追尾精度<±0.5 degデータレート再生中継方式Tx:1.5,6,24,51 MbpsRx:155 MbpsユーザーインターフェースEthernet(1000base-T)3-8 航空機通信実験報告菅 智茂 片山典彦 高橋 卓衛星通信は地上の通信網が届かない航空機の飛行時において有効な通信手段である。航空機の飛行中においては、乗客のエンターテイメント利用のため、大容量な通信サービスが望まれる。また、災害時などにおいても、合成開口レーダで取得した高詳細、大容量な画像データのリアルタイム伝送が不可欠になっている。本稿では、情報通信研究機構(NICT)が開発したWINDS衛星用航空機地球局の概要及び開発した航空機地球局を実際に航空機に搭載して行ったWINDSマルチビームアンテナ(MBA)のアンテナパターン特性、航空機地球局アンテナの追尾特性、飛行時のドップラ特性、データ伝送特性及び大容量ファイル特性の飛行実験の結果について述べる。本実験では飛行時において約20 Mbpsの速度でのファイル伝送に成功した。1273 超高速衛星通信技術
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