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の信号周波数を18 GHz帯に周波数変換し、信号電力を増幅した後にNICT鹿島局に向けて信号を折返し送信する。鹿島局ではWINDSから受信した18GHz帯の信号を3GHz帯にダウンコンバートしIFパッチから出力する。また、鹿島局には衛星を介さない経路としてトランスレータ経路がある。トランスレータ経路は局内においてアップコンバートされた28 GHz帯の信号を18GHz帯にダウンコンバートし、受信経路に接続する経路である。WINDS経路とトランスレータ経路はスイッチで切り替えることができる。この2つの異なる経路を通った信号の違いをみることにより、衛星通信路の影響を評価することができる。3 GHz帯の受信信号は1.2 GHzに周波数変換された後、受信機に入力される。受信機には地球観測衛星の受信機として使用可能なZodiac Data Systems社製の高速復調器(Cortex High Data Rate Receiver)を使用した[4]。DPD回路による非線形歪み補償性能は復調器のBER(Bit Error Rate)によって評価した。また、WINDS経路は鹿島局と衛星に高出力増幅器がそれぞれ存在することや、雲などによる電波の減衰により増幅器の動作点が変動するため、あらかじめ衛星通信路の非線形性を把握できない。そこで衛星通信路の非線形性は復調器における受信コンステレーション分布により推定し、その推定結果に基づきDPDの補正係数を決めることとした。送信するデータ列は誤り訂正符号を含まない15段の擬似乱数(PRN15)とし、BER測定は受信機がビット同期した後にビットカウンタを初期化(ゼロリセット)してから計測した。このとき1ビット当りの信号電力対雑音電力密度比(Eb/No)は、受信機入力端の信号を方向性結合器によって分配しスペクトラムアナライザによって測定される信号電力及び雑音電力密度から計算することで求めた。衛星折返し系ではノイズ量を自由に制御することができないため、本実験ではHPAの出力電力を変えることでEb/Noを変化させながらBER特性を取得した。本実験の主要パラメータを表1に示す。WINDSのMBA回線は1.1GHzの帯域幅があり、本実験で必要な十分に広い帯域幅を有している。実験結果4.1DPDによるBER特性評価DPDによるBER改善の効果を確認するため、Gbpsを超える伝送レートで最も非線形性が明瞭に確認できるシンボルレート350Msps(データレート1.36Gbps)においてDPD実施時のBERを取得した。衛星折返し通信路では、地上局の増幅器と衛星搭載増幅器の非線形性が全体の非線形性に現れることから、最も広いダイナミックレンジでBERの特性が確認できるように衛星中継器利得を適切に設定し試験を実施した。実験結果を図4に示す。局内折返し経路のトランスレータ経路の測定結果はEb/Noが大きくなるにつれて、BERが改善される様子が見られる(図4 緑:実線)。またBERが小さくなるほど、所要Eb/Noが増大していく様子が見られる。地上局HPAの出力電力が47.2dBmを超えたあたりからエラーフロアが生じる様子が見られる。この結果よりトランスレータ経路においては、地上局のHPAの非線形性の影響が生じるのは出力電力が約47 dBmであることがわかる。次に衛星折返し経路で測定した結果(図4 青:破線)4パラメータ値備考シンボルレート340, 450 Msps選択可能データパターンPRN( Pseudo-Random Noise)15-stageロールオフ率0.4送受ともにSquared Root Raised Cosine filter変調方式16 QAM表1 実験主要パラメータ図3 非線形歪み補償回路を備えた変調試作ボード外観図4 ディジタルプリディストーション(DPD)によるBER特性の変化1.00E‐071.00E‐061.00E‐051.00E‐041.00E‐031.00E‐0281318BEREb/No[dB]TheoryTranslator RouteSatellite Routewith DPDSatellite Routew/o DPD48.9*50.0*47.7*48.2*48.1*46.8*47.2*48.5*45.6**Earth station HPA output power in dBm1353-9 衛星通信路の非線形歪み補償実験

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