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度を表4にまとめる。表3の結果と表4の実伝送速度を比較すると、一般的な輻輳制御技術であるCUBICでは、帯域を十分に利用できていないことがわかるが、WINDS用にチューニングした輻輳制御技術を使用すると十分に利用できていることがわかる。また通信を開始してからの立ち上がりにおいても、CUBICでは最大値到達までに十数秒かかっていたが、WINDS向けにチューニングした輻輳制御技術では、3~4秒で最大値に到達した。以上のことから、遅延の大きい衛星通信では、遅延や回線状況に合わせてTCPウィンドウサイズをコントロールするタイプの輻輳制御技術が有効であることを確認した。5.4UDP通信伝送特性UDP通信[9]はTCP通信と異なり、セッションを確立せずにデータを送信する方式となっており、処理が高速であるが、パケットロスが発生しても再送処理等が行われない通信方式である。伝送測定においては、遅延の影響を受けず、伝送路の環境をロスの発生状況で確認できることやその伝送路の容量を把握できることからUDPによる測定を実施した。iperfによるUDP通信の測定の場合、伝送するデータ量を設定できるため、ロスが発生しない限界の容量を調査することができる。各データレート設定における容量の調査結果を表5に示す。また伝送時の変動状況例として図15にWINDS回線24 Mbpsにおける1分間の測定結果を示す。TCP通信と比べ、UDP通信で使用されるヘッダのデータ量が少ないことなどから、WINDSの再生交換中継方式におけるネットワーク理論値とほぼ同等の容量で伝送できることを確認した。また、UDP通信時の変動結果においては、測定を開始した直後から指定した容量の送信が始まり、若干の変動はあるが、船舶の移動や動揺による影響を受けず、データ量がほぼ一定の安定した通信状況を確認した。むすび船舶用地球局の衛星捕捉と追尾特性を把握し、船舶の移動や動揺に対して十分な性能を持つことを確認した。また追尾性能が十分であったことから、TCPとUDPの通信状況も安定していたことを確認した。特にTCP通信においてはWINDS向けにチューニングした輻輳制御技術を用いていることで回線容量を最大限に利用できることも確認した。洋上向けの通信手段として、衛星通信を用いるメリットは、拠点間の距離にかかわらず、衛星の通信エリア内であれば伝送速度が一定であることと複数拠点をネットワーク化することにおいても衛星を経由して柔軟に構築できること等が挙げられる。今後は小型、軽量で省電力の地球局を開発し、WINDSのMBAエリアだけでなく、主に海上をカバーする広域電子走査アンテナ[4](APAA)エリアにおいてもMbpsクラスの回線構築が必要となる。開発した地球局を用いて実海域における試験を積み重ね、Mbpsクラスの回線構築の実証と洋上におけるネットワーク化や有効な利用方法について検討を進める。謝辞本実験は、JAMSTECの海域試験の一環で行われたものであり、船舶への実験装置搭載や研究員の乗船等において、ご指導いただいた関係者の方々に感謝の意を表する。本研究は、総合科学技術・イノベーション会議のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「次世代海洋資源調査技術」(管理法人:海洋研究開発機構)により実施した。【参考文献【1Norihiko Katayama, Naoko Yoshimura, Takashi Takahashi, and Morio Toyoshima,” Conceptual Design of High-Speed Satellite Communication Equipment for ASV,” 21st Ka and Broadband Communications Conference, Oct. 2015.2Norihiko Katayama, Naoko Yoshimura, Hideo Takamatsu, Susumu Kitazume, Yosuke Takahara, John Logan, and John Ness “Development of Ka-band mobile communications platform for Ocean 6WINDS回線UDPネットワーク帯域6Mbps4.6Mbps24Mbps18Mbps51Mbps36Mbps表5 UDP通信におけるWINDS回線ネットワーク帯域図15 UDP通信状況 05000100001500020000020406080時間[sec] スループット [kbps] 144   情報通信研究機構研究報告 Vol. 63 No. 2 (2017)3 超高速衛星通信技術

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