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まえがき第5世代移動通信システム(5G)は、超高速、低遅延、多数接続等がシステム要件とされ、その実現に向けた研究開発が世界各国で進められている。特に、従来の移動通信システムと異なり、IoTの基盤となることが期待されており、膨大な数の端末が基地局に接続されるとともに、多種多様なサービスが提供されることが見込まれている[1]。多数接続とともに、自動走行のような低遅延を必要とするサービスの提供も期待されており、基地局と同時接続可能な端末数の増加を実現しつつ低遅延を実現する技術が必要となる。センサーなど膨大な数のモノが接続されるIoT環境において、無線リソース要求や送信許可の制御なしに通信を行う無線アクセス技術は、多数接続と低遅延を可能とする技術であるものの、接続する端末数が増加すると信号の衝突確率が上昇するため、多数接続時における信号衝突の効率的な検出を行うことが課題となる。この課題を解決するため、多数接続と低遅延を両立する送信端末識別技術と干渉抑圧・除去技術を備えた無線アクセス技術に関する研究開発に取り組んでいる。既存の無線アクセス技術では、基地局またはアクセスポイントにおけるアンテナ1本に対して、同一時間・同一周波数を利用して接続可能な端末数は1台となるのに対して、この無線アクセス技術では複数端末との同時接続を実現する。無線アクセス方式の開発図1に同時接続と低遅延を実現する無線アクセス技術の概要を示す。この無線アクセス技術では、同一時間・同一周波数を複数端末で共用することで周波数利用効率を向上させて、端末局がデータ送信時に基地局に対して行う送信開始要求を最小化するグラントフリー伝送を採用することで遅延時間を低減している。この無線アクセス技術を実現するためには、同一時間・同一周波数を複数の端末で共用することから、同時接12図1 同時接続と低遅延を実現する無線アクセス技術の概要従来方式新たな無線アクセス方式周波数時間AABC要求割当通知送信周波数時間送信開始要求不要・送信端末識別技術・干渉抑圧・軽減技術低遅延化のためのTTI長短縮同一時間・周波数を複数端末で共用ABCABC送信開始要求が必要→遅延時間の増大(約10ms)同一時間・周波数で接続可能な端末数は1台(基地局アンテナ1本あたり)基地局基地局端末端末端末端末端末端末2-2 多数デバイス接続ワイヤレス技術に関する研究開発滝沢賢一 森山雅文 大堂雅之 表 昌佑 手塚隼人 村上 誉 石津健太郎 児島史秀IoT時代においては、膨大な数のセンサー等から送信される小サイズデータを、周波数利用の観点から高い効率で収容する無線アクセス技術が求められる。さらに、IoTデバイスには、ドローンや自動走行運転車など、低遅延接続を求めるデバイスにも搭載されることが予想されている。このようなIoT時代において求められる無線アクセス技術を実現するため、同一時間・同一周波数を複数の端末局で共用して、さらに送信制御を簡素化することによる低遅延接続を可能とする無線アクセス技術の研究開発に取り組んでいる。この無線アクセス技術を実現するために、同時接続と低遅延接続を可能とする無線フレーム構成の設計と、同時接続する端末局間で生じる干渉を抑圧・除去する信号処理方法について、計算機シミュレーション及びハードウェア実装における性能評価を進めている。この無線アクセス技術によって、同一時間・同一周波数に対して、複数アンテナ等を利用することなく、5台以上の端末局との同時接続を5ミリ秒以下の遅延時間で実現することを目標として、研究開発を進めている。112 地上通信技術の研究開発

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