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まえがき大規模災害が発生した場合、災害現場の状況把握、情報収集及び救援活動における情報共有において情報通信技術は重要なものとなる。携帯電話等地上系のインフラが使用不可になった際に衛星通信は代替利用として有効な手段となる。情報通信研究機構(NICT)では超高速インターネット衛星(WINDS)の研究を行っており[1]、衛星を自動捕捉、自動追尾可能なアンテナシステムを搭載し、走行しながらWINDS衛星との通信が可能な小型車載地球局(以下、小型車載局)を開発し、運用している[2]。通信システムを構築する際に伝搬環境の把握は重要となる。NICTでは、これまで小型車載局の特徴を活かし、南海トラフ地震が発生した際に巨大津波等の被害が想定される四国近畿地方の太平洋沿岸における広域[3]及び九州地方[4]、西日本の日本海沿岸地域[5]において、衛星と移動している地球局との間の伝搬測定をしてきた。本稿では各地域において移動しながら伝搬測定を行った結果について報告する。また、静止状態における衛星回線のダウンリンク及びアップリンクマージン測定を行ったのでその結果についても報告する。WINDS小型車載局小型車載局の諸元及び外観を表1及び図1に示す。小型車載局はレドーム付きの開口径65 cmのカセグレンアンテナ、20 Wクラスの大電力増幅器(HPA)、3軸ジンバル機構及び変復調器などで構成され、図1に示すように一般の車両に搭載されている。小型車載局に搭載されているアンテナシステムはGPS受信機から得られる自局の位置情報と衛星からグローバルビームで送信されるBeacon信号レベルを用いて衛星を自動捕捉、自動追尾を行うことができ、走行しながら衛星回線を構築することが可能である。ここでBeacon信号とは網モニタ信号(ミッションテ12送信周波数27.5-28.6 GHz受信周波数17.7-18.8 GHz,18.9 GHz (Beaconを受信)偏波直線偏波(V/H)SSPA出力20 WEIRP55.5 dBWG/T16.0 dB/Kアンテナカセグレンアンテナ開口経:65 cmアンテナ駆動範囲El :20-90 degAz:無限回転X-El:±15 deg追尾精度<±0.2 degデータレート再生中継方式Tx:1.5,6,24,51 MbpsRx:155 MbpsユーザーインターフェースEthernet(1000base-T)発電能力2.8 kVA以上表1 小型車載局諸元図1 小型車載局外観図3-11 陸上移動通信実験報告菅 智茂 赤石 明 鄭 炳表 川崎和義 浅井敏男 高橋 卓衛星通信は災害時等の緊急時の有効な通信手段として注目されている。NICTでは超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)を自動追尾するアンテナシステムを搭載した小型車載局を開発し、移動しながら衛星回線を構築できるようになった。本稿では南海トラフ地震を想定し、四国近畿地方、九州地方、西日本日本海沿岸地方において高速移動環境下でのKa帯衛星通信における電波伝搬測定を行った結果について報告する。1473 超高速衛星通信技術
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