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続する端末局の識別技術及び端末局間干渉の抑圧・除去技術が必要になる。これらの要素技術に関して次に述べる。なお、無線アクセス技術の設計においては、IoTデバイスを対象とした無線アクセス技術の利用が想定されるシナリオ[2]を踏まえて、占有するチャネル帯域幅は1.08 MHzとする。2.1無線フレーム構成ここでは、端末局から基地局へのデータ伝送を行う上り回線を対象として、その無線フレーム構成について述べる。図2に無線フレームの基本構成を示す。無線スロットは500マイクロ秒の時間長を有して、250マイクロ秒のリファレンス信号及びデータ信号から構成される。リファレンス信号は、端末局の識別と各端末局と基地局間の通信路特性の推定を行う目的で使用される。データ信号は、端末局から送信されるデータ伝送を目的として使用される。リファレンス信号とデータ信号を連続して送信することで、無線区間における伝送遅延の最小化を行っている。リファレンス信号の構成について述べる。リファレンス信号としては直交系列を用いることで、複数端末局から同時に信号が送信された場合でも、送信端末局を識別するとともに、データ信号の復調及び復号に必要となる通信路特性の推定を行う。本研究開発では、直交系列としてLTE-Aでも使用されているZadoff-Chu系列を採用する。この系列を用いる場合、各端末局からの信号が干渉しないように通信路特性を推定するためには、Zadoff-Chu系列に対して有効パスの最大伝搬遅延時間以上の巡回シフト数を与えた系列を、各端末局に割り当てる必要がある。ここで、最大伝搬遅延時間は、5Gの無線アクセス方式の標準技術仕様の策定に向けた電波伝搬モデル[4]によれば、見通し外環境モデルのうち遅延時間が最大となるモデルはTDL-Aであって、有効パスの最大遅延時間は約3.5マイクロ秒となる。また、端末局から基地局までの伝搬遅延は、基地局間距離を1153 mとし、都市部マクロセルを仮定すると、3.8マイクロ秒となる。以上から、リファレンス信号における直交系列の巡回シフト数は7.3マイクロ秒相当以上にする必要があり、あわせて局間同期誤差を考慮して、16.7マイクロ秒に相当する18サンプルを直交系列の巡回シフト数とする。同時接続数の最大値として12台の収容を考えると、系列長は216以上とする必要があり、本研究開発においてZadoff-Chu系列長は223とする。図2に示したように、この系列を巡回拡張した系列長225の系列に対して、長さ20サンプル(18.5マイクロ秒相当)のサイクリックプレフィックス(Cyclic Prefix: CP)を付与して、リファレンス信号とする。図3に巡回シフトを適用した際のリファレンス信号の構成イメージを示す。このように端末局ごとに異なる巡回シフト数を与えることで、基地局が複数局からのリファレンス信号を同時に受信した場合においても、送信端末局の識別が可能になる。グラントフリー伝送においては、グラントフリーとするグラントを端末局に送信する際、端末識別を目的とした端末固有の巡回シフト数の割当てを行うことになる。次にデータ信号の構成について述べる。図4には、各端末局におけるデータ信号における情報ビットへの処理を示す。情報ビットはスクランブラ処理を行った後、8ビット巡回冗長検査(Cyclic Redundancy Check:CRC)符号化を行う。その後、ターボ符号化(符号化率は1/2または1/3、拘束長4)を行い、QPSKまたは16QAMによって伝送する。変調波形を構成した後、CPを付与して送信信号を構成する。図2に示したように、本無線アクセス方式における無線フレーム構成では、ガード時間を後続の時間スロットを利用する信号との干渉を防ぐ目的で設定している。符号化率と変調方式との組み合わせによって、単位データ信号区間において伝送可能な情報ビット数(メッセージサイズ)を17バイトから54バイトまで可変とする。mMTCに対する利用シナリオ[2]においては20バイトのメッセージサイズが想定されていることから、このシナリオを対象とした設計となっている。図2 無線フレームの基本構成[3]リファレンス信号(225サンプル)データ信号(225サンプル)500マイクロ秒(=1スロット)サイクリックプレフィックス(20サンプル)250マイクロ秒250マイクロ秒ガード時間サイクリックプレフィックス(20サンプル)ガード時間図3 リファレンス信号の構成イメージZadoff-Chu系列Zadoff-Chu系列(18サンプルの巡回シフト)1223206204223,116.7µs時間Zadoff-Chu系列(36サンプルの巡回シフト)188187223,1巡回シフトを行わないZadoff-Chu系列との相関特性反射波の遅延時間が16.7µs以下であれば、端末局間での干渉なく、通信路応答(遅延プロファイル)の推定が可能ABC16.7µs図4 データ信号生成におけるブロック図CRCターボ符号化スクランブラ変調CP付与12 情報通信研究機構研究報告 Vol. 63 No. 2 (2017)2 地上通信技術の研究開発
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