HTML5 Webook
17/168
2.2干渉抑圧・除去技術ここではデータ信号における干渉抑圧・除去技術について述べる。グラントフリー伝送において、リファレンス信号は端末局固有の巡回シフト数が直交系列に対して与えられていることから信号分離は可能であるものの、データ信号は直交系列ではないことから、端末局間干渉の抑圧・除去が必要になる。同一時間・同一周波数を共用するすべての端末局は同一の符号化率及び変調方式を用いることを仮定して、リファレンス信号から推定した通信路特性を用いて、端末局間干渉の抑圧・除去を行う。方法としては、図5に示す2つの方法(逐次型と並列型)について評価を行う。逐次型においては、受信信号電力が高い順に復調・復号を行い、CRC判定の結果から誤りなしと判定された場合には信号レプリカを作成して、これを受信信号波形から減算することで干渉抑圧・除去を行う。ただし、復調・復号が成功するためには、所望の信号対干渉電力比(Signal-to-Interference Ratio:SIR)が得られることが条件となる。一方、演算量は接続端末数の増加に対して線形的に増加することから、後述の並列型と比較して処理遅延は少なくてすむ。並列型においては、受信波形と通信路特性の推定値から、各端末局からの送信信号の全組み合わせに対して尤度を計算して、その結果から各端末局から送信された符号語ビットの対数尤度比を計算する。その後、ターボ復号器において復号処理を行い、得られた外部情報をフィードバックして尤度更新を行うことで送信データを推定する方法である。逐次型とは異なり信号対干渉電力比に対する制約はないものの、すべての送信信号の組み合わせを考慮することから、演算量は接続端末数の増加に対して指数的に増加する。2つの方法に対する性能評価結果を図6に示す。信号対干渉電力比を変えた時の信号分離成功台数のヒストグラムを示している。同時接続数は5台として、横軸に分離成功した端末台数を示している。変調方式はQPSK、ターボ符号の符号化率は1/3として、10,000回の試行を行った。リファレンス信号については、端末局ごとに異なる巡回シフト数を与えて、干渉抑圧・除去処理においてはリファレンス信号から推定値した通信路特性を用いた。性能評価結果より、逐次型においては、90%以上の分離成功確率を得るためには、SIRを3 dB以上にする必要があることがわかる。一方、並列型では、SIRは0dBであっても、90%以上の分離成功確率で信号分離が可能であることがわかる。これらの干渉抑圧・除去技術について、実環境における動作実証を目指して、ハードウェア上における動作検証を進めている[11][12]。また、この無線アクセス技術によって実現可能となる収容端末数について、送信開始要求を最小化するグラントフリー伝送を用いた際における評価もあわせて行っている[13]。本研究開発の目標である5ミリ秒以下の遅延時間を実環境においても満たせるよう、干渉抑圧・除去アルゴリズムの改修を進めていく。図5 干渉抑圧・除去技術の概要マルチユーザ検出器(等化・復調)ターボ復号器対数尤度比受信波形ターボ復号器対数尤度比UE1UEK検出器・復号器間で設定回数の尤度交換を行う。並列型(マルチユーザ検出型)干渉抑圧・除去アルゴリズムのブロック構成...等化・復調ターボ復号器対数尤度比レプリカ作成受信波形減算全端末局(K台)が復号されるまで処理を行う。UEk逐次型干渉抑圧・除去アルゴリズムのブロック構成k=1~K(a)逐次型 [3][5]–[8](b)並列型 [6][9][10]図6 干渉抑圧・除去技術に関する性能評価結果並列型(マルチユーザ型)5台同時接続時に分離成功した端末数ヒストグラム(試行回数:10000)逐次型5台同時接続時に分離成功した端末数ヒストグラム(試行回数:10000)132-2 多数デバイス接続ワイヤレス技術に関する研究開発
元のページ
../index.html#17