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示すようにほぼ直線状に並んで配置されているが、設置間隔は均一ではない状態である。測定中は送信局の位置を固定し、受信局を移動させて最大22 mまでの伝送距離で受信電力の変化を観測した。伝搬損失測定は、300 GHz帯の信号発生器から送信した無変調連続波をスペクトラムアナライザで受信することで行った。送受信アンテナには利得25 dBi(ビーム幅10°)のホーンアンテナを使用し、送信電力は-15 dBmとした。測定した受信電力より求めた伝搬損失の距離特性を図11に示す。アンテナ高さは送受共に床から215 cmの位置であった。図中には直線近似により求めた伝搬損失の推定式も示している。伝搬損失のモデルは、ITU-R 勧告P.1238のモデルを基本にしており、参照距離1 mでの理論的な伝搬損失(L0 = 82 dB)を起点として、最小二乗法により測定値からパスロス係数(N)は、N = 20.2となり、自由空間の場合(N = 20)より僅かに大きい結果となった。また直線近似の曲線から値が大きく外れる測定場所が存在していることから、送受信機がサーバ筐体に近い位置に配置されることで、反射波の影響が含まれることが推測された。詳細な伝搬損失の変動状況を確認するために、図12のように送受信アンテナを配置して、正規反射点にサーバ筐体が存在する場合と、存在しない場合についてハイトパターン特性の検証を行った。その結果、直接波のみが受信される場合と直接波とサーバ筐体からの反射波が受信される場合で明確な違いが発生することが確認され、サーバ筐体の配置間隔と送受信アンテナ高は、サーバ間での通信を検討するうえで重要なパラメータとなることがわかった。またレイトレース法による計算結果からも、変動の原因はサーバ筐体からの反射波の影響であることが明確になった。この他にもオフィスや廊下環境での伝搬測定を行い、得られた結果をまとめてITU-R SG3 WP3Kに提案した。その結果、屋内近距離伝搬損失の推定法を示すITU-R勧告P.1238の次期改定案に提案モデルが含まれることが合意された。まとめWRC-19の開催に向けて、議題1.11、1.13、1.15に関連したミリ波・テラヘルツ波の電波伝搬の研究が加速しており、開発された伝搬モデルは今後導入される無線通信システムの無線回線設計や干渉検討に役立て4図10 サーバ筐体配置状況(Copyright(C)2017 IEICE, [4] Fig. 2)図11 伝搬損失測定結果(Copyright(C)2017 IEICE, [4] Fig. 5)図12 レイトレース法による測定結果の検証(Copyright(C)2017 IEICE, [4] Fig. 12)1510508090100110120d (m)Path loss (dB)Path loss exponentN= 20.2501001502002503008090100110RX antenna height from server top (mm)Path loss (dB) Measurement Ray-tracingTXCeilingRX positionDirect pathregionDirect and reflect paths region20 情報通信研究機構研究報告 Vol. 63 No. 2 (2017)2 地上通信技術の研究開発
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