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まえがきNICTの検討テーマのひとつであるワイヤレスグリッド構造の最も典型的な実施形態であるSUNは、当初スマートメータへの適用を前提とされていたが、SUNの応用はスマートメータシステムだけにとどまらないことは容易に予想される[1]–[4]。すなわち、スマートメータ用途においてみられる、低速・小容量の通信と、省電力動作等による長期的な動作という性質をもつものであれば、非常に多様な分野における利活用が予想される。近年、その意義が注目されているIoT (Internet of Things)分野や、M2M (Machine-to-Machine)分野も例外ではない。将来の無線通信サービス需要の多様化、すなわちアプリケーションの多様化に応じて、SUN無線機の適用分野も同様に多様化していくことが予想される。このような見地による拡張SUNの概念を図1に示す。図1では、具体的に3つの多様化形態について示している。すなわち、①特に電力供給が制限されることのない、多数の無線機によるメッシュ状トポロジを特徴とする「大容量データ収集網」、②電池駆動時等を想定した、低消費電力での動作を特徴とする「超省電力動作網」、③災害地や工場等、これまで無線通信リンクの適用が想定されていない環境におけるサービスの展開を想定する「高信頼メッシュ網」である。本稿では、特に①の大容量データ収集網を想定し、当該形態における効果的な経路選択技術に関する研究開発について述べる。1超省電力動作網•動的スリープ技術•屋外無線機実装大容量データ収集網•大容量データ経路選択技術•データ結合技術SUN無線信号無線機搭載型メータソーシャルクラウド災害地モニタ…無線機搭載型センサ/モニタWAN無線信号WAN側収集制御局構造物モニタ家庭内センサ無線機搭載型センサ/モニタ農業用センサ高信頼メッシュ網•SUNメッシュのロバスト化•無線利用のモデル化検討収集制御局スマートメータ無線機搭載型センサ/モニタ工場内センサ図1 拡張SUNの概念2-5 ビル内センシング等に有効な大規模メッシュ構築技術の研究開発児島史秀 ヴェルティナ ラバリジョンナ本報告では、NICTにより検討されているワイヤレスグリッド構造の一動作形態であり、多数の端末が協調してデータの中継等を行う大容量データ収集網に関する研究開発について述べる。本研究開発では、適切なメッシュ構造の構築と運用を実現するために、国際推奨方法IEEE 802.15.10にて定義され、冗長性の低い非IPにより、無線パーソナルエリアネットワーク(PAN:Personal Area Network)内でデータフレームの効率的な経路選択制御を行うレイヤ2経路選択制御(L2R: Layer 2 Routing)を適用することについて検討した。成果として、複数の無線端末が互いの通信品質を把握しながら自動的にあて先までの中継経路を見つける自律型メッシュ構築機能、データの衝突を減らすデータフレーム結合伝送機能、多様な通信サービスを提供できる無線通信仮想化機能の実装に成功し、屋外実験を含む無線通信実験の実施により動作評価を行った。292 地上通信技術の研究開発

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