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レイヤ2経路選択制御の検討2.1レイヤ2経路選択制御の原理本検討における経路選択制御技術の最大の特徴は、本制御に必要となる端末間情報交換等の動作を、パーソナルエリアネットワーク[5]におけるレイヤ2の呼称で知られるMAC層の制御で行う点である。そのために、取り扱う情報は、MAC層において扱う情報の単位である情報要素(IE:Information Element)で記述され、MAC層の機能によって交換され、処理される。これにより、レイヤ3制御であるIP(Internet Protocol)により処理される従来の経路選択制御に比べて、冗長分が少なく、簡易な処理が可能になると考えられる[6]–[8]。次節より、本検討にて研究開発・実証を行ったレイヤ2経路選択制御のうち、主要な技術について述べる。2.2自律型メッシュ構築機能本機能は、メッシュ構造を構成する各無線機が、自身の情報を含むメッシュ構築用信号(自分がほかのどの無線機とつながっているか等)をそれぞれ定期的に発信し、かつ、ほかの無線機から同じ信号を受信することで、全体のメッシュ構造の感知を可能とするものである。最初のメッシュ構築用信号を発信する無線機はメッシュルートと呼ばれ、ほかの無線機からの当該信号は、メッシュルートの信号を基準として構成される。図2に、時間経過に伴うメッシュ構築用信号によるメッシュルートRへの経路構築の動作例を示す。図2(i)では、メッシュを構築しようとするメッシュルート無線機により、Rのあて先データ等を含んだ最初のメッシュ構築用信号が発信され、それらが、ほかの無線機A、Bに受信されている。これによりA、Bはメッシュの存在を検知し、同時に、近傍にRが存在することも検知する。さらに、受信したメッシュ構築用信号に基づき、Rとの間の通信品質についても知ることができる。次に、A、BはRをはじめ、ほかの無線機にも同様の情報を与える目的で、メッシュルート構築用信号を発信する(図2(ii)参照)。これを受信した無線機C、Dも同様の手順を実施する(図2(iii)参照)。最終的に、R、A、B、C、Dの5つの無線機でメッシュを構築し、かつ、それぞれの無線機が、近傍無線機、到達可能な無線機、それぞれの無線機間の通信品質を知ることになり、図2(iv)のように特定の無線機をあて先とする適切な中継経路を確立することができる2.3データフレーム結合機能本機能は、あて先が同じ複数のデータフレームを各無線機で結合し、1つのデータフレームとして次の無線機に中継することで、データフレームの数を減少させ、閉塞と衝突の低減により、データ収集の性能劣化を防ぐものである。図3に、データフレーム結合機能の動作例を示す。ここでは、図2と同じメッシュにおいて、メッシュルートR以外の無線機A、B、C、DがそれぞれRにあてたデータフレームを発生し、そのフレームが図2(iv)の経路により、中継される状況を示す。通常であれば、各無線機からの4つのデータフレームがほぼ同時にRに到来し、その際にフレーム同士の衝突が発生し、R側でそれぞれを正常に受信できない場合が生じる。一方で、図3のようなデータフレーム結合機能では、あて先を同じとするデータフレームを結合して、1つのデータフレームとして中継することにより、この例では、結果的にRに到来するのは4つのデータフレームが結合された1つのデータフレームであり、前述のような衝突による性能劣化を回避することができる。2 RR: メッシュルート無線機ABCD: 非メッシュルート無線機RABCDRABCDABCD: 通信可能な無線リンク(IEEE 802.15.4 PANリンク): メッシュ構築用信号: 確立されたメッシュルートへの経路(i)(ii)(iii)(iv)図2 自律型メッシュ構築機能30 情報通信研究機構研究報告 Vol. 63 No. 2 (2017)2 地上通信技術の研究開発
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