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めマルチパス環境となり、ミリ秒~秒のオーダーで不感地帯が出現・消滅したり、移動したりする。製造工程における段取り替えやシステム電源のON-OFFや数時間~数日のオーダーで、レイアウト変更や新規ラインの導入などで数カ月~数年オーダーで無線環境が変化するなど、あらかじめすべての場合を想定した固定的な無線システムの運用に限界がある。(2)多様な無線環境例えば、工場の立地によっては外来波の影響を考慮しなければならない。図2は、住宅地に隣接する工場においてスペクトラムアナライザを用いて2.4 GHz帯の周波数利用状態を調査した際のスナップショットである。縦軸が受信信号レベル、横軸が利用チャネル、色が赤いほど長時間電波が観測されていることを意味する。図2の両端に通信事業者が設置した無線LANホットスポットの識別名(ESSID)が確認でき、工場内で使われているRF-IDタグシステムより広い周波数にわたり、強い信号レベルを示していることがわかった。このことから、住宅地近接型の工場では、自社システムのみ把握しているだけでは無線通信環境を評価するには不十分であると言える。また、製造システムが通信を阻害するようなノイズ源になる場合もある。図3は住宅地から隔離された大規模工場内の大型加工機付近で実証実験中に高時間分解能を持つスペクトラムアナライザにより観測されたノイズをとらえたものである。このように、製造現場は、業種、工場の規模、電波遮蔽物の有無、立地条件による外来波の到来、または設備起因のノイズの有無によって無線環境の状態が異なる。このことが製造現場における無線の利活用においての課題となっている。(3)混在する異種システムさらに、製造現場では、すべてのシステムが同時に入れ替えられることはまれで、システムごとに個別最適化された個々の設備や、個々の工程ごとに段階的に異種の無線システムが導入されるのが一般的であり、システム全体の最適化が困難である。また、グローバルで使いやすい2.4 GHz帯から混雑する傾向がある。製造現場における無線の現状本章では、製造現場における無線の現状について紹介する。図4は住宅地から隔離された大規模工場の(a)2015年7月と(b)2015年12月の920 MHz帯のスペ3図2 (住宅地隣接型中小規模工場)住宅地設置のWi-Fi APの影響図3  (隔離型大規模工場)機器ノイズの影響図4 920MHz帯利用状態の時間変化(a)2015年7月(b)2015年12月試験運⽤本運⽤新システム36   情報通信研究機構研究報告 Vol. 63 No. 2 (2017)2 地上通信技術の研究開発

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