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受信を行う。バスが走行するエリアの広さとバスの走行頻度によるが、バスの移動とともに地域内に同じ行政情報、イベント情報、広告など、地域コミュニティが必要とする様々な情報を共有することができる。今回開発した端末間通信は、中央制御を行わず、通信端末同士が通信範囲に入れば自律的に通信を行ってネットワークを形成するため、基地局などの通信設備は不要で、通信ネットワークの一部の通信端末が故障や停止しても、ネットワーク全体への影響が少なく、災害に強いといえる。さらに、開発した端末間通信は以下の特徴を有している。(1)自律通信プロトコルとGPSに基づく同期通信範囲にある通信端末が自律通信を行うために、あらかじめ通信プロトコルを定めなければならない。まず、他の通信端末からの送信を素早く検知するよう、全ての通信端末が同じ周波数チャネルを用いることとした。なお、通信端末の数がチャネルの容量を超える場合は、筆者らが提案する方式[11]を用いて複数周波数チャネルを使いながら、他の通信端末を早く検出することが可能である。次に、通信端末からの送信を分散させるために、各試験端末の働きに応じて、その中に含まれる通信端末の送信タイムスロットを規定する送信フレームを用いた。送信フレームにおいて、各々の試験端末の働きを考慮し、それぞれに含まれる通信端末の送信タイムスロット長と送信頻度を割り当てる。各通信端末は割り当てられたタイムスロット以外では送信しない(具体的なフレーム構成例を4で述べる)。送信フレーム長を60秒とし、60秒を周期に同じフレームが繰り返される。地域に分散している通信端末がもっている送信フレームを同期させるために、全ての試験端末にはGPS受信機を取り付け、GPS衛星からのタイムパルスを用いてフレーム同期を行っている。一方、建物の中の設置等でGPS受信困難な試験端末に対して、GPSのタイムパルスに同期した試験端末の通信端末から同期信号を送信して、フレーム同期を実現させた。(2)TDMAとCSMA/CAに基づくチャネルアクセス全ての通信端末は同じ周波数チャネルを用いたとし、前項より通信端末からのチャネルアクセスは試験端末の類に基づく時分割多重アクセス(TDMA: Time Division Multiple Access)を基本とする。しかし、通信範囲に同じ種類の試験端末が複数存在する場合は、お互いの通信端末からの送信パケットが衝突する恐れがある。パケット衝突を回避するために、上記TDMAに加えて搬送波検知多重アクセス/衝突回避(CSMA/CA: Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)を用いた。他の送信する通信端末がいないことを確認してから、自分から送信する仕組みである。TDMAとCSMA/CAを組み合わせて用いることによって、異なる種類の試験端末と同じ種類の試験端末の両方の通信端末が自律的に通信してネットワークを形成する。(3)情報バッファ機能通信端末同士が通信範囲内に入っているときのみ通信が可能となるため、より多くの通信端末の間で情報図1 開発した端末間通信のコンセプト図センサ情報収集行政情報広告配信サーババス路線行政・イベント情報の表示グループで情報共有自治体など携帯端末屋上端末センサ端末サイネージ端末(屋内)バス位置通知バスの移動で、情報を収集・運搬・配信サイネージ端末(バス内)通信エリアの拡大2 地上通信技術の研究開発42   情報通信研究機構研究報告 Vol. 63 No. 2 (2017)

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