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ネットワークの冗長度を増やした。図6からわかるように、1台の屋上端末は2~6台の他の屋上端末と通信リンクをもち、受信したバス位置等の情報の共有をより確実にした。また、何らかの理由で商用電源を使えなくなった場合はカバレッジが縮小するが、図6の実線のリンクで示すように5台の自立型屋上端末で形成されるネットワークの稼働が可能である。精華くるりんバスを中心としたテストベッドで用いられる送信フレームの構成例を図7に示す。1つの送信フレーム長は60秒であり、GPS衛星からのタイムパルスに同期している。送信フレームは複数のタイムスロットに分けられ、各試験端末に割り当てられている。まず、バス搭載のサイネージ端末(S-B)に4秒長のタイムスロットをほぼ均等に4回割り当て、より多くの送信チャンスを与えている。通信範囲内に2台以上のバスが存在する場合は、CSMA/CAを用いて自律的に衝突回避を行う。次に、施設設置のサイネージ端末(S-F)は、バス搭載のサイネージ端末と同等のタイムスロット割当を受けているが、Senと同じタイムスロットを共有している。両者が固定設置であることとお互いに通信範囲にない設置が可能のためである。万が一、S-FとSenは通信範囲に現れる場合は上記と同じくCSMA/CAを用いて自律通信を行う。上記と異なって、屋上端末はカバレッジが広く、隣接する屋上端末同士がお互いに通信してデータを中継する必要があるため、屋上端末に対して1台ずつ1個のタイムスロットを割り当てた。ただし、タイムスロットの長さを2秒に制限している。したがって、屋上端末はバス位置情報やセンサデータ及び緊急情報などの送受信に制限し、コンテンツの送受信を行わない。精華くるりんバスから送信したバス位置情報等は、そのバスの通信範囲にある屋上端末に受信され、そして屋上端末ネットワークを通して屋上端末同士で共有される。図8にバス位置情報の伝送遅延を測定した例を示す。一般性を失うことなく、バス位置情報が走行中の精華くるりんバスから任意の位置から送信され、図6のむくのきセンター設置の屋上端末T6にて収集されるとし、伝送遅延時間はバス位置情報を送信した時刻と屋上端末T6に到達した時刻との差である。大部分のバス位置情報の伝送遅延時間が60秒以内で、120秒を超える伝送遅延時間がわずかである。表1に伝送遅延時間データを解析した結果を示す。82.8%のデータが60秒以内であり、99.7%のデータは120秒であることを確認した。すなわち、精華くるりんバスの現在位置をほぼ2分以内で把握でき、また、82.8%が1分以内で把握することが可能である。むすび本稿では、中央制御を行わない端末間通信テストベッドの開発、展開及び実証実験について記述した。東京都港区及び京都府精華町に展開しているテストベッドが順調に稼働していて、それぞれの地域における情報集配信と共有に役立っている。また、精華町のような郊外地型環境では、本テストベッドで用いたシンプルな端末間通信システムでもバスロケ案内を実現し、しかも通信料金がかからないため導入しやすい。本稿では割愛したが、港区での実証実験では、港区の外部連携サーバとの連携を実現し、港区発の緊急情報の配信もテストベッド上で行っている。また、精華町の実証実験では、バスロケーション案内の有用性が確認され、バスロケーション案内の試験公開を開始する予定である。免許不要で利用可能かつ通信料金がかからない特徴と、故障や災害に強い特徴を発揮し、また、遅延があるもののバスの移動に伴って容易に情報の集配信を行う端末間通信の利活用を今後更に開拓したい。謝辞テストベッドの展開及び実証実験に対して、ご協力を頂いている東京都港区、京都府精華町をはじめ、各関係機関に深く感謝を申し上げる。5表1 伝搬遅延時間の解析結果遅延時間5~30秒31~60秒61~120秒120~132秒データ数4123981653比率42.1%40.7%16.9%0.3%累積比率42.1%82.8/%99.7%100%収集した位置情報の数収集した位置情報の時間遅延(秒)図8 バス位置情報の伝搬遅延測定例472-7 地域情報共有のための端末間通信ネットワークの開発と実証

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