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技術の研究開発の必要性が増していた。こうした背景の下、総務省による「無人航空機を活用した無線中継システムと地上ネットワークとの連携及び共用技術の研究開発」に関する委託研究公募が行われた。これに対し、NICTが研究代表者となり東北大学、電子航法研究所、(株)KDDI総合研究所、日本電気(株)の5機関でコンソーシアムを組んで共同で受託し、2013~2015年度の3年間、研究開発を実施した。研究開発に当たって想定した無人機を活用した災害時の通信確保の利用シーンを図7に示す。実施した研究課題は多岐にわたっているが、その内容と担当機関は以下のとおりである。5 GHz帯CNPC リンクの共用に関して:(1)周波数共用評価のための電波伝搬モデルの確立(NICT)(2)他の地上用無線業務との周波数共用技術(電子航法研究所)衛星経由のCNPC リンクの共用に関して:(3)Ku/Ka 帯におけるUASと他の衛星通信との周波数共用技術(NICT)無人機を用いた災害時等における通信のための周波数有効利用技術に関して:(4)無人機搭載小型サーバによる高度蓄積中継技術(KDDI総合研究所)(5)遅延許容ネットワークの構成に関する研究開発(東北大学)(6)複数地上局と複数無人機局からなる巨大MIMO時空間符号化信号中継技術(東北大学)(7)無人機の利用環境に応じた高度周波数制御技術(NICT、電子航法研究所)(8)ネットワーク故障診断アルゴリズム(NICT)無人機のCNPC リンクにおける周波数有効利用に関して:(9)地上・無人機連携マルチリンクMIMO符号化中継技術(NICT)(10)複数地上局と複数無人機間のハンドオーバ制御アルゴリズムの実装と評価(日本電気)以上は、(3)を除き、地上局と無人機の間、あるいは同時に飛行する複数の無人機間の無線回線(5GHz帯)を対象としている。2015年度後半には、実際に福島県と香川県の試験フィールドにて小型無人機(固定翼機、マルチロータ機)に開発した試作機を搭載して実飛行環境にてその性能評価を行う実験を関係機関合同で実施した(図8)。研究成果の詳細は文献[7]を参照いただきたい。また、その成果の一部は国際標準化活動にも反映した。2014年度においては、9月に開催されたAWG第17会合(AWG-17)に参加し、本研究開発課題のひとつである「複数地上局間の小型無人機ハンドオーバ制御技術」に関する寄書を行い、APT 参加国に対して我が国の取組を反映させてAPT 報告書を完成した。さらに、翌年3月に日本にて開催されたAWG の第18会合(AWG-18)では、無人機の公共的な利用についての新たな報告書作成提案を行い、本研究開発の結果の一部を展示、2015年2月に開催された第19会合(AWG-19)では無人機の公共業務用サービスとアプリケーションに関する暫定新報告書の作成に向けた作業文書の提案を行った[8]。その他、ICAOの会合においても5 GHz 帯における伝搬特性の測定結果や共用技術の提案等を実施した。一方、本研究開発に関わる研究開発運営委員会の下に国内の大学、国研、民間研究所、通信機メーカ、無人機関連団体等計16機関をメンバーとし、総務省、国交省、経産省等を含む計6省庁をオブザーバとする「無人航空機システムの利用技術に関する関係機関連絡会」(主査:鈴木真二東京大学教授)を設置した。2014~2015 年度での計6回の会合を経て、省庁間にまたがる政府側を含む関係機関の間の横連携を図るとともに、無人機に関する国内外の関連動向、利用ケース別の通信要求条件、無線システムの課題等について図7 大規模災害時の通信確保に向けて想定される小型無人機の利用シーン図8 総務省受託研究のフィールド実証評価試験の様子孤立地域孤立地域役場・消防等第1制御局地上ネットワークとの連携・MIMO符号化中継により高信頼制御回線を構築し、UASを安定運用孤立地域や避難所の上空を順次巡回し、メッセージを耐遅延中継により運ぶ「ライフメッセンジャー」第2制御局MIMO符号化中継耐遅延中継通信搭載カメラ映像のリアルタイム伝送による孤立地域の探索と被害状況把握無人機が上空に仮想電波塔を展開し、孤立地域との通信を迅速に確保ユーザは手持ちの携帯端末でWi-Fi接続(電子メール、IP電話、Webアクセス等)大災害で通信孤立地域発生⇒小型UASを発進(註)UAS:UnmannedAircraftSystem(無人航空機システム)UA:Unmanned Aircraft(無人航空機)実施日:平成27年12月20日~27日実施場所:ふくしまスカイパーク(福島県福島市)参加機関:NICT、東北大、ENRI、KDDI総合研究所、NEC実施内容:伝搬測定、共用測定、耐遅延・蓄積転送通信評価、ハンドオーバ評価実験に使用した小型固定翼UAのランチャーによる発進小型固定翼UASマルチロータUAS小型固定翼UAとマルチロータUAの同時飛行と空対空中継実験(東北大)AeroMACS移動局(ENRI)福島県警特殊捜査チーム(SIT)の見学実験に使用したマルチロータUA(東北大)データを取得する学生(東北大)開発したUA搭載5GHz帯中継装置(伝搬・NW符号化・ハンドオーバ)UAの自動飛行経路設定蓄積転送通信ペイロードの搭載(KDDI総合研究所)572-9 小型無人航空機におけるワイヤレス通信技術の研究開発~空の IoT 実現に向けて~
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