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取りまとめ、その結果を本研究開発に反映させた。現在でこそ、無人機関係の委員会や研究会は多数開催されるようになっているが、当時は、まだこうした会議は国内ではほとんどなく、関連機関の横連携を図る先進的な取組となり、当時の人的ネットワークは現在の省庁間にわたる様々な委員会やプロジェクト引き継がれている。2016年度からは、総務省の新規委託研究「無人航空機システムの周波数効率利用のための通信ネットワーク技術の研究開発」をNICT(研究代表者)、東北大学、(株)日立製作所、日本電気(株)のコンソーシアムで受託し、総務省が2016年に制度化した「無人移動体画像伝送システム」である2.4 GHz帯と5.7 GHz 帯(次節参照)を主な対象としてその周波数利用効率の増大を目指した研究開発を3ヵ年計画でスタートしている。小型無人機の制御用無線の現状と 新たなロボット用電波の割当て 現在、国内の小型無人機のほとんどは、ホビー用・業務用ともに、その操縦端末(プロポ)に2.4 GHz帯(いわゆるISM帯)を使用している。言うまでもなくこのバンドは無線LAN(Wi-Fi)が多く使っており、それゆえにデバイスは安価で免許も不要であり、作る方も使う方にも大変便利なバンドである。次々と搬送波周波数を切り替えながら通信を行う干渉に強い方式(周波数ホッピング方式)を用いており、複数ユーザが同時に使用しても問題なく、また周辺にWi-Fi 機器があっても運用可能である。しかし直接見える範囲でのみ利用するホビー用や一部の業務用はそれで大きな問題はないと考えられるが、送信出力も小さいため、遠方までの飛行に適さないうえに、Wi-Fi 機器が多い都市部上空などで飛行させる場合には、他から干渉を受けるリスクが増大する。またこのバンドは制御だけでなくテレメトリや画像伝送などにも混在して使われ、1つの無人機でシステム内干渉を起こすリスクもある。2.4 GHz帯以外で免許が不要で無人機の制御・テレメトリに使用可能なバンドの1つとしては、産業用無人機(主に農薬散布用)に使われている73 MHz 帯のほか、特定小電力無線局である920MHz帯があり、既に一部使用している機種もある。920MHz帯は地上のセンサネットワークや無線タグにも使われているため、周波数共用手段として、送信出力制限(20 mW、地上局は登録すれば250 mWまで送信可)、チャネル帯域幅(200 kHz、5チャネルまで束ねることが可能)及び送信時間率(デューティレート)の制限が規定されており、高精細な映像伝送には適さないが、デバイス価格が廉価な割にまだ2.4 GHz 帯ほど混雑はしていない。またある程度の帯域とチャネル数がとれ、2.4GHz 帯よりは遠くに電波が飛ぶため、主に業務用無人機の制御・テレメトリ用としては適していると考えられ、国際的にもこれに近いバンドをセンサやロボットに使用している国も多いため国際市場への展開もしやすいと考えられ、我々のグループでもこのバンドを活用した技術開発を進めている(後述)。一方、総務省の情報通信審議会は2016年3月、ロボットにおける電波利用の高度化に関する技術的条件等に関して答申し、169 MHz帯、2.4 GHz 帯の一部及び5.7GHz帯の各バンドの合計130 MHz 余りをロボットや無人機による移動体画像伝送用として無線局免許を前提として使用できるようにすることを決定し、同年8月より免許制度が開始された[9][10]。これらのバンドはいずれも業務用で、その運用には無線従事者免許(第3 級陸上特殊無線技士以上)が必要となるが、空中線電力はそれぞれのバンドで1 W(169 MHz 帯の上空のみ原則10 mW)が可能となるため、5 km以上の通信距離が必要というニーズにこたえるものとなっている。ただし、これらのバンドはいずれも他の無線業務との共用が前提となっている。これらは主に移動体画像伝送用ということになっているが、もちろん,制御用にも使用することは可能である。しかし共用バンドである以上、他の無線システムから干渉を受けるリスクが発生する。無線LANのように、CSMA方式で互いに干渉を避けながら運用するという方法も考えられるが、周波数の利用効率があまり高くできず、特に近傍で大きな出力で送信されると、キャリアセンスが働いて送信できなくなることがある。そのため、CSMA方式は前提としておらず、免許人の間で相互に運用調整を行いながら使用することが運用の基本となる。こうした背景の下、上記の3つの免許バンドの効率的かつ安全な利用を実現するため、これまで無線業務の運用調整に実績のある電波技術協会の助言を受けて適切な運用調整の仕組みを導入し、ロボット自体の運用管理(飛行・運用のエリア、位置、高度、時間、ロボットID等)及び電波管理(電波のチャネル、帯域幅、空中線電力等)を集中管理で行うサービスの実現が検討され、そのための団体として、平成28年7月11日、利用事業者、通信事業者、大学、国研、企業等で構成される「日本無人機運行管理コンソーシアム(JUTM)」(会長:鈴木真二東大教授)が設立された[11]。目指すシステムのイメージを図9に示す[12]。当初は共通プラットフォーム上での無人機飛行前でのスケジューラ機能の提供にとどまるが、これに地形・構造物のデータや周辺無人機・有人機のリアルタイム飛行位置、気象情報及び3次元電波伝搬シミュレーション結果等を458 情報通信研究機構研究報告 Vol. 63 No. 2 (2017)2 地上通信技術の研究開発
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