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反映し、かつ将来的には無人機の飛行途中でもリアルタイムに無線リソース(送信スロットや周波数、空中線電力等)を変更することが可能なシステムの導入を目指しており、前節に述べた総務省の新規委託研究がそれに対応している。これにより、ロボット、特に業務用小型無人機の安全な運航と周波数の効率的な利用に寄与することができ、その普及と市場の拡大を後押しするものと考えている。電波が直接届かない見通し外での無人機 の制御と飛しょう体間の位置情報共有 最後に、現在、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)と共同で取り組んでいる技術を2つ紹介する。1.遅延時間保証型マルチホップ中継制御通信技術、2.飛しょう体間の位置情報共有技術である。いずれも、内閣府総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)タフ・ロボティクス・チャレンジ(プログラムマネージャ:田所諭東北大教授)[13]の中で開発されたものである。1.遅延時間保証型マルチホップ中継制御通信技術この技術は、山や建物等の障害物で直接電波が届かない、いわゆる「直接電波見通し外」になっても制御通信を維持するものであり、法制面においてはまだ強い規制がされている飛行方法である。政府が検討している「小型無人機の利活用と技術開発のロードマップ」[14]においては、飛行レベルの目安としてレベル 1(目視内操縦飛行)、レベル2(目視内の自動飛行)、レベル3(無人地帯での目視外飛行)、レベル4(有人地帯での目視外飛行)の4段階が設定されており、レベル3(2018年頃)とレベル4(2020年代頃以降)では、目視外飛行を実現すべきとされている[15]。目視外飛行には2つあり、1つは、(a)目による目視はできないが、電波は届く状態での飛行、もう1つは、(b)目による目視もできず、かつ電波も届かない状態での飛行(「直接電波見通し外」)、である。(a)の場合は、電波はつながっているので、直接目視に代わる代替手段があれば、安全な飛行が実現できる。例えば、様々な無人機搭載センサや搭載カメラ映像による運航などである。これは、現在でも技術的には実現できている。 (b)は、(a)よりも更に難易度の高い飛行方法であるが、将来、電波遮蔽の多い都市部や山間部での長距離にわたる物流や低高度モニタリングなどでは必ず必要となるものである。現状では、この飛行をする方法として唯一あるのは、無線通信を全く使わず、GPSとプログラムされた経路情報のみにより行う完全自律飛行である。しかし、この方法では、飛行中の無人機の位置や状態は操縦者側で把握することができず、極めて危険である。一般的な小型無人機は、電波が届かなくなると、自動的に操縦者の元に帰還するよう設定されているものが多い(フェールセーフ)。この「直接電波見通し外」での安全な飛行を実現するための通信経路構築技術としては大きく分けて3通りある(図10)。(1)地上のインフラ経由(例えば携帯電話ネットワーク)、(2)衛星経由、(3)他の無人機やロボットなどの中継局経由、である。現在我々が開発に取り組んでいるのは、(3)であり、複数の無人機やロボットが協力し、中継することで、見通し外での制御通信を維持する。(1)については、最も簡単に目視外・見通し外飛行が実現できる方法であり、これまで上空の無人機において携帯電話の電波を使用することは法律上できなかったが、総務省が昨年、通信事業者に対し、「実用化試験局免許」を与え、各種試験を行う場合にのみ使用できるようになった[16]。これを利用して各社が試験を開始しているが、地上の携帯電話ネットワークへの影響や、上空でのサービスエリアの分布などに課題5図9 運航管理・電波管理システムイメージ図10 直接電波見通し外での無線リンク維持の方法(1)公衆網・携帯電話網等の地上インフラを中継(地上局や基地局をハンドオーバ)(2)衛星による中継(3)別の無人機やロボットによる中継低⾼度での運送、観測、撮影、捜索等VLOS・RLOS運航BVLOS運航BRLOS運航592-9 小型無人航空機におけるワイヤレス通信技術の研究開発~空の IoT 実現に向けて~

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