HTML5 Webook
65/168

に報告する予定である。169 MHz帯は、やはり大きな伝送速度は期待できず、使用可能なチャネル数も4程度しかとれない。しかし、920MHz帯や2.4GHz 帯よりもはるかに長い地上・上空間の自由空間伝搬距離が期待できるため、通常使用する電波が切れたり不安定になった時のバックアップ回線としての利用が想定され、目視外・見通し外での無人機の運航の信頼性をさらに高めるのに役立つものと期待されている。2.飛しょう体間位置情報共有技術最近、小型無人機と有人ヘリとのニアミスが報告されている。もしそれらが接触した場合、小型無人機側には人的被害はないかもしれないが、ヘリの方は搭乗しているパイロット等の人命にかかわる事故になる可能性がある。また小型無人機の飛行が災害時や物流利用などで将来混み合ってくると、相互の衝突とその墜落による地上の人や設備、事業への被害のリスクも高まる。こうした状況を踏まえ、我々は、異なる事業者が運用する無人機間、あるいは有人航空機と無人機との間の衝突の防止に役立てるための相互の位置情報を放送型の通信プロトコルを用いて互いに共有するシステムを開発した。前項のシステムと同様、920 MHz 帯の特定小電力無線局を用いて試作・実証を行っており、これを「ドローンマッパー」と名付けた[18](図13)。本システムはマルチホップ機能を同様に有しており、例えば図13において、操縦者 A から別の操縦者B が運用する無人機B′が見通し外にあり、その位置が検知できない場合でも、Aが運用する無人機A′から無人機B′が見通し内にあれば、Aは無人機 A′を経由して(中継して)無人機 B′の位置を検知できる。技術的には、基地局等の中央制御装置等の通信インフラを用いず、通信端末のみで構成される簡易なシステムで地域情報共有を可能とする技術として開発・実証が進められてきた地上ベースの「端末間通信ネットワーク技術」(2-7参照)をベースとしている。そのMAC層(メディアアクセス制御層)のプロトコルについては、IEEE802.15.8として国際標準化も進められている。ドローンマッパーを搭載した無人機及び有人ヘリは、無人機の操縦者及びヘリのコックピットにおいて、相互の位置情報がタブレット端末画面に1秒間に2~4回の更新頻度で自身、あるいは自身が操縦する無人機の位置を中心にして、地図上にレーダーチャートのように表示される(図14)。そして水平方向と垂直方向である一定の距離以下に接近する無人機があると、そのアイコンが赤く表示される簡単なアラーム機能を持たせている。このグラフィカルユーザインターフェース(GUI)については、今後、無人機ユーザや有人機ユーザの意見を取り入れて改善していく予定である。なお、ドローンマッパーは前述のタフ・ワイヤレスよりも帯域が狭く、また同報型プロトコルであることもあり、最長電波到達距離は見通しで少なくとも9km以上であることを確認している。おわりに我々のグループでは、今日のドローンブームが起こる以前から無人機の将来性と無線技術の重要性に着目6図12「タフ・ワイヤレス」による見通し外中継制御のフィールド実証実験(2016年6・11月、2017年6月、宮城県仙台市東北大学青葉山新キャンパス)中継ドローン(有線給電)20m操縦者側制御局(制御コマンド送信・テレメトリ受信)操縦者からは直接は通信がつながらない環境(直接電波⾒通し外)中継ドローンを経由して制御対象ドローンを⾒通し外地点から離陸・上昇目視外・直接電波⾒通し外の地点から離陸・上昇制御対象ドローンマルチホップ中継制御リンクを経由して、目視外かつ直接電波見通し外地点からのドローンの離陸・上昇に成功中継ドローンを経由して受信した制御対象ドローンのテレメトリ情報図13 飛しょう体間位置情報共有システム「ドローンマッパー」同種・異種⾶しょう体間での位置・ID情報共有遠隔操縦者A(自分)遠隔操縦者B(他人)有人ヘリAが操縦するドローンA’Bが操縦するドローンB’目視外ドローンA’、B’の位置を把握ドローンA’、B’、有人ヘリの位置を把握図14 ドローンマッパーの無人機への搭載とタブレット画面地上設置の擬似ドローン局(他人のドローン)ドローン局A(他人のドローン)ドローン局A(自分のドローン)地上制御局タブレットモニター画面(すべてのドローンマッパー局の位置、高度、⽅位等を地図上に表示)※自分のドローンから一定の距離以内に⼊ったドローンは、⾚⾊で表示(簡易アラーム)実験場所︓東北⼤学⻘葉⼭新キャンパス(仙台)地上制御局からは直接⾒通し外地上制御局からは⾒通し内地上制御局からみて、直接⾒通し外より⾒通し内に移動612-9 小型無人航空機におけるワイヤレス通信技術の研究開発~空の IoT 実現に向けて~

元のページ  ../index.html#65

このブックを見る