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 高齢化社会が進む中、安心・安全な医療保障体系の構築はますます重要になっている。衛星通信を用いた医療ICTネットワーク実験は、各種生体信号をリアルタイムに収集するボディエリアネットワーク(BAN)や診療画像等の伝送に衛星通信を取り入れ、より効率的なヘルスケア体系や遠隔医療教育システム構築の一助となることを目的としている。3.8将来衛星基礎技術実験 次期技術試験衛星等将来の通信衛星に期待される技術の実験として、下記8種類の実験を計画した。① 直交周波数分割多重変調(OFDM)伝送実験 WINDSには1.1 GHzと広帯域な中継器を搭載している。この中継器の特性を活かした多値変調周波数多重による高速衛星通信モデムの開発を行った。16APSK(50 Msps)信号を16波周波数多重したOFDMにより3.2 Gbpsの高速伝送技術を検証した。 本実験の成果は本報告書3-5にて紹介している。② 再構成可能な衛星回線リソース再配分実験 災害時等に時々刻々と変化するトラフィック状況に対し、周波数利用効率を高めるためチャネライザの開発を行った。1~64 Mbpsの複数のデータ信号波をWINDS経由で伝送し、地球局に接続したチャネライザで、帯域幅、中心周波数等を適宜変化させ衛星回線リソース再配分が実施されていることを検証した[3]。③ SHV伝送実験 本実験はNHKとの共同研究において、次期衛星放送に必要となる技術の検証を行う。伝送素材とNHKが開発しているスーパーハイビジョン(SHV)を使用し、データレートとして150~1,000Mbpsの伝送特性等の検証を行う。 本実験の成果は本報告書3-6にて紹介している。④ ダイナミックデマンドアサイン実験 あらかじめ計画ベースでスロット割り付けを行うのではなく、ユーザからのアソシエーションに応じて動的にスロット割当てを行う技術の検証を行う。WINDSに搭載されているベースバンド交換部のソフトウェアを書き換える必要があるが、ソフトウェアロード評価装置等を使用した地上試験で動作確認を行っている。⑤ APAA健全性確認実験 本実験は打ち上げ直後の初期チェックアウト時からJAXA及びNICTで継続的に実施している。REV法によりAPAA素子の健全性を確認する。 本実験の成果は本報告書3-7にて紹介している。⑥ 航空機実験 航空機地球局を開発し、航空機地球局からPi-SAR観測データ等大容量データの伝送に可能なブロードバンド回線の確立を検証する。 本実験の成果は本報告書3-8にて紹介している。⑦ Ka帯多値変調信号伝送実験 本実験はJAXA殿との協定に基づいて実施されるものであり、QPSK、16QAM、16APSK、64QAM等の多値デジタル変調信号伝送における非直線性、降雨減衰等の伝送路の特性変化の影響を把握し、対策を検討するための基礎実験を実施する。 本実験の成果は本報告書3-9にて紹介している。⑧ 洋上通信実験 近年、海洋資源調査技術の開発が進められており、遠隔操作探査機(ROV)が観測したデータのリアルタイム伝送と陸上拠点からROVの遠隔操作を可能とするシステムや自律型無人探査機(AUV)が観測したデータを洋上中継器(ASV)から調査船(RV)や陸上拠点へ伝送するシステムが考案されている。 RVとASVに搭載可能で、波浪による動揺に対してアンテナが衛星を自動追尾し、安定した衛星回線構築を可能とする高速衛星通信装置の開発を行っている。ASV搭載用地球局には無人でも運用可能となるよう、電源管理や緊急時の停波等を遠隔で実施できるリモートアクセスシステムを搭載している。 これらの地球局を使用して、洋上の船舶間または船舶と陸上拠点間で数Mbpsから数十Mbpsクラスの洋上通信実験を行い、追尾性能確認、衛星回線構築実証及び伝送特性確認を実施する。 本実験の成果は本報告書3-10に紹介している。むすび WINDSは平成20年2月23日に打ち上げられ、各種衛星通信実験に使用されてきた。平成25年4月から後期運用に移行し、NICTは後期基本実験計画を立案した。フルオート可搬型実験地球局機能検証実験など後期基本実験計画について紹介を行った。 打ち上げ後9年を過ぎているが、今後も後期基本実験を継続して実施する予定である。【参考文献【1情報通信研究機構, “超高速インターネット衛星(WINDS)特集,” 情報通信研究機構季報, vol.53, no.4, 2007年12月.2Takashi Takahashi, Naoko Yoshimura, Akira Akaishi, Norihiko Katayama, Morio Toyoshima, Naoto Kadowaki, Shojiro Ishibashi, Tatsuya Fukuda, and Hiroshi Yoshida, ”THE TELE-OPERATION EXPERIMET OF THE HYBRID REMOTELY OPERATED VEHICLE USING SATELLITE LINK,” 34th International Conference on Ocean, Offshore and Arctic Engineering, OMAE2015-41645.3三浦周, 秋岡真樹, 髙橋卓, 小宮山典男, 山口雄一, 米田誠良, “耐災害衛星通信システム用チャネライザの開発とWINDSを用いた通信実験,” 信学技報, vol.114, no.27, SAT2014-10, pp.51–56, 2014年5月.4673-1 WINDS後期基本実験

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