HTML5 Webook
74/168

は関東ビーム中心よりアップリンク衛星の性能指数(G/T)で約3.5 dB、ダウンリンク実効放射電力(EIRP)で約1.5 dB低い値となっている。APAAでの実験ではビーム中心を鹿島に設定しているので衛星諸元の劣化は無い。図1はMBA実験用1.2 m VSATと1 m可搬局間及びAPAA実験用2.4 m VSATと大型地球局間の再生交換中継降雨減衰補償実験の屋外装置である。アップリンク降雨減衰補償アップリンク降雨減衰補償は地球局送信終段増幅器出力電力を制御する方法(Uplink Power Control (UPC)と、アップリンクの伝送モードを変えることにより送信地球局所要EIRPを制御する方法がある。2.1アップリンクパワーコントロール(UPC)による降雨減衰補償UPCは衛星通信で広く用いられている降雨減衰補償方法で、基準信号として衛星のビーコン信号、親局/基準局等から送信するPilot信号を使用する方式が良く知られている。WINDS再生交換中継の降雨減衰補償は、衛星から定電力で発射される再生交換中継TDMAリファレンスバーストをUPCの基準信号としている。再生交換地球局屋内ユニット(IDU)は受信リファレンスバースト信号強度とガードタイムの雑音強度との比より受信C/Noを測定し、あらかじめ設定したDownlink C/No limitとの差C/No marginを計算する。このC/No marginが晴天時のC/No marginより減少した場合、IDUは送信出力電力を上げて降雨減衰補償を行う[1]。IDUにはUPC動作設定パラメータとしてTHR rain fade (K1/K2)、Coefficient (K1)、Coefficient (K2)がある。Coefficient (K1)、Coefficient (K2)はC/No margin減に対し送信電力を増加する際の係数である。これは、受信の18 GHz帯のC/No減少に対しての28GHz帯送信電力増加の比を設定する。またTHR rain fade (K1/K2)にはこの係数を切り替える動作点である。例えばTHR rain fade (K1/K2)=5、K1=1、K2=2と設定すればC/No marginが5 dBまで減少するまで、送信電力をC/No margin減と同じ値で増やし、その後のC/No margin減少には送信電力をC/No margin減の2倍で増やす。この動作原理を図2に示す。もちろん、IDU送信出力電力を上げてもVSAT EIRPはそれに比例して増加するのではなく、VSAT終段電力増幅器の入出力特性及び飽和出力電力で抑えられる。UPC動作確認試験は、紙に電波吸収体のカーボン(墨汁)を塗布した遮蔽板をアンテナホーンに付けることで降雨減衰を模擬して実施した。減衰量は塗布する墨汁の濃度により細かく制御可能である。この方法では、送受両方の電波吸収が起こるため、アップリンク/ダウンリンク両方の降雨減衰が同時に模擬できる。また、遮蔽板により受信システム雑音も増加するので、ダウンリンク降雨マージンの減少を実際の降雨時と同様に模擬できる。ただ、遮蔽板による減衰は非常に短い距離で電波を吸収するため、受信帯域(18 GHz帯)と送信帯域(28 GHz帯)の減衰量がほぼ等しくなる。この点は実際の降雨による減衰と異なる。図3に1.2 m VSATホーンに遮蔽板を付けた状況及び遮蔽板を示す。1.2mアンテナ/40W SSPA VSATでのUPC動作確認試験結果を図4、5に示す。図4に6 MモードでのUPC動作検証を示す。このときのIDU設定は下記のとおりである。C/No limit = 93 dB2遮蔽板(黒い部分が墨汁) 図3 1.2 m VSATホーンに遮蔽板を付けた状態図2 WINDS再生系IDU 降雨補償動作原理3 超高速衛星通信技術70   情報通信研究機構研究報告 Vol. 63 No. 2 (2017)

元のページ  ../index.html#74

このブックを見る