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ないため、表2のダウンリンク回線設計例は非常に単純化されたモデルであるが、約19 dBの降雨減衰補償が豪雨エリアに適用できる。ただし、晴天エリアC/Noマージン約6 dBからは13 dBの降雨補償である。今回の試験ではダウンリンク所要C/No及びC/Noマージンの検証を行った。アンテナホーンに遮蔽板を付けて受信C/Noを下げ、そのときのパッケトロスを測定した。図11に関東MBA/1.2 m VSATで測定した鹿島での受信C/No対パケットロス特性を示す。図11ではおよそC/No 95 dBでパッケトロスが急激に増加している。この値はダウンリンク所要C/No 93.9 dBに比べ1 dB程であり、誤差範囲内と考えられる。同様にAPAAダウンリンクの受信C/No対パケットロス特性を図12に示す。図12に示すとおり、APAAでもMBAとほぼ同一の結果が得られた。スループット及びTCP/IPアップリンク伝送モード変更による降雨減衰補償 WINDS各伝送モードでのスループット計算値及びネットワークスループットを測定するためのソフトウェアiperfにより測定したUDPスループットを表3に示す。表3は1スーパーフレームで288トラッフィクバーストスロットを使用した場合のスループットである。ユーザーに割り当てられるスロット数が少ない場合はそれに比例してスループットは低下する。降雨時に伝送モードを下げることにより降雨補償を行う場合は、表3に示す値に比例してアップリンク伝送速度/情報量が低下するので、アプリケーション側での制御も必要となる場合も生じる。TCP/IPのスループットは再送制御があるので、伝送路の容量だけでなく、パッケトサイズ、ウインドサイズ等により変わる。特に衛星通信のように遅延が大きな系では伝送可能な容量が大きく変わる。TCP/IPでウインドサイズを6/24/51 Mモードで4Kbytes~4Mbytes間自動設定、1.5Mモードで4~128Kbytes間自動設定とほぼWINDS再生交換中継回線で最大スループットが得られるように設定しiperfで測定した推定EIRP対スループット及びパッケトロスを図13に示す。TCP/IPスループットは衛星回線のパッケトロスが発生すると急激に下がることがわかる。衛星伝送モードが51 Mモードでは0.2%程度、24 M/6 Mモードでも1~2%のパッケトロスを超えると一段下の伝送モードに切り替え、パケットロス無しで運用する方が回線のスループットは上がる。したがって、TCP/IPでの伝送サービスでは、パケットロスが発生する閾値を超える降雨減衰があった場合は直ちに低速伝送モードに切り替えた方が良いことがわかる。降雨時の回線不稼働率WINDS再生交換中継方式での降雨減衰による回線不稼働率を、ITU-R P.618-8モデルで計算した降雨減衰量に基づいて検討する。アップリンク降雨減衰量対回線不稼働率を表4に示す。表4には各都市のMBAビーム中心位置からの距離より推定した衛星G/T及び各都市でのアップリンク推定降雨減衰補償可能量も併せて示す。各都市でのアップリンク推定降雨減衰補4表3 アップリンク各伝送モードでのUDPスループット伝送モード1.5M6M24M51MNo of Slot/Super frame288288288288No of Data/Slot283060Data volume incl. All"0" data (Byte)223223223223Data volume excl. All"0" data (Byte)212212212212Data volume excl. ATM header (Byte)192192192192Data rate excl. ATM header (Mbps)1.3825.53020.73641.472実測最大Throughput (Mbps)1.275.119.138.2注1:No of Slot が変わった場合のスループットは比例配分で計算すれば良い。5図12 受信C/No対パケットロス特性 (APAA)図13 推定EIRP対スループット並びにパッケトロス012345678051015202530354035404550556065Packet Loss Rate (%)Throughput (Mbps)Estimated EIRP [dBW]Estimated EIRP vs TCP/IP Throughput & Packet Loss51M24M6M1.5M51M-P/L24M-P/L6M-P/L3 超高速衛星通信技術74 情報通信研究機構研究報告 Vol. 63 No. 2 (2017)
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