HTML5 Webook
8/168

ろうマイクロセルに対して、個別に周波数を割り当てて管理することは現実的ではない。以上のことから、マイクロセルは一部の周波数帯を共用することが望ましく、そのために必要な技術要素の研究開発も必要である。これまでNICTでは、通信事業者の協調が可能な異種無線ネットワークの実現に向けて、コグニティブ無線ネットワークを基礎技術として制御アルゴリズムやシステムアーキテクチャに関する研究開発を長年行ってきた。その一部は市町村規模による社会実証試験 [2] や東日本大震災における被災地支援 [3]-[5] などを通して有効性が確認でき、コグニティブ無線ルータとしても実用化してきた[6]。また、コグニティブ無線ネットワークの基礎アーキテクチャに関する国際標準規格として世界初となる IEEE 1900.4 等の策定 [7][8] にも大きく貢献した。NICTによるこの研究開発は、管理が異なる無線ネットワークの協調を前提とする観点から前述した5Gの概念と一致するものであり、基礎技術の研究開発や直近での実用化としては意義が大きかったと考える。しかしながら、それは移動通信システムの中心となる3GPP(Third Generation Partnership Project)において策定される規格(以下、3GPP規格)とは独立した検討であり、将来における本格的な実用化を見据えた場合には、必要な技術を3GPP規格に定められる各機能と対応付け、共通のインターフェイスに従い、さらに検討を行う必要がある。そこでNICTでは、2016年4月から開始した中長期計画を踏まえ、3GPPにおいて検討される5G向け規格の検討も考慮し、前述の5G概念を実現する技術の研究開発を行っている。一方で、周波数共用に関しても、NICTではテレビ放送帯を中心としたホワイトスペース技術(TVWS技術)の研究開発を実施してきた [9]。TVWS技術は、大電力で一方的に伝送するテレビ放送と小電力の双方向無線通信の間の干渉を管理することに技術的な困難さがあり、各国の規制にも見られるように、データベースを用いた集中管理方式が干渉を回避するための技術の根幹である。しかし、5Gにおける小電力のマイクロセル同士の周波数共用に向けては、より有効で簡易な方式も考えられ、更なる研究開発が求められる。 本稿では、前述の5G概念を実現するため、移動通信システムにおいてプライベート空間の概念を導入し、そこにマイクロセルを柔軟に設置することを可能にする3GPPベースのシステムアーキテクチャを提案し、プロトタイプを用いた動作検証の結果を示す。また、移動通信システムの国際ローミングにおける課題を整理する。プライベート空間におけるマイクロセル運用2.1プライベート空間の導入とマイクロセル通信事業者の位置づけ将来の移動通信システムにおいて想定するセル展開2図1 将来の移動通信システムにおけるセル展開と端末の接続形態(AかBに契約がある場合は緑に接続可能)<マイクロセル通信事業者>(施設管理者/サービスプロバイダ等)端末A(セルラー通信事業者Aに加入して利用)端末B(セルラー通信事業者Bに加入して利用)<セルラー通信事業者A>端末C(自営システム内のみで利用)<セルラー通信事業者B>マクロセルマイクロセル4   情報通信研究機構研究報告 Vol. 63 No. 2 (2017)2 地上通信技術の研究開発

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る