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す。このデータでは15時11分から15時33分の間に大きな減衰が見られる。図17はこの大きな減衰部分の時間的拡大である。これを見ると、降雨減衰量と降雨量の相関がよく取れていることがわかる。このときの風向はおおむね鹿島からWINDSを見た方向から吹いていたので、降雨減衰量と降雨量間の時間差は降雨減衰を引き起こす斜め伝搬路の雨雲が鹿島に到着するまでの遅延と思われる。また降雨減衰量最大傾斜は約0.5 dB/秒である。WINDS網情報信号残留キャリアレベルによる降雨減衰はスペクトラムアナライザで1秒ごとの信号レベルを測定した。網情報信号残留キャリア周波数は18.9GHzである。測定は、NICTの鹿島宇宙技術センター、本部(小金井)及び沖縄電磁波技術センターで行った。鹿島宇宙技術センターでのWINDS網情報信号残留キャリアレベル測定結果の一例を1分計降雨量と併せて図19に示す。2009年から2017年の鹿島で取得した降雨減衰特性測定から降雨減衰量と降雨量の相関及び降雨減衰量と降雨減衰量変化速度の相関のまとめが図20、21である。MBAでの1.2 m VSATアップリンク降雨減衰補償量26.7 dB及び28 GHzアップリンク周波数帯と18GHzダウンリンク周波数帯との約2倍の降雨減衰量比を考慮すると、鹿島では約50 mm/Hの「激しい雨」まで補償可能と思われる。降雨時に回線設定諸元を変更し衛星回線を維持するための重要なパラメータの1つに制御応答速度がある。所要応答速度は回線マージン及び降雨時の減衰速度変化により決める必要がある。図21によると25 dBの降雨減衰補償の制御はおおよそ15~20 dB/minの降雨減衰変化速度に対応する必要がある。これは余裕を持っても約2秒で1 dBの降雨減衰補償制御が必要でWINDS図18 WINDS網情報信号残留キャリアレベル測定装置図20 降雨減衰量対降雨量(鹿島)図21 降雨減衰量変化速度対降雨減衰量(鹿島)図17 図16の15時部分時間拡大図図19WINDS網情報信号残留キャリアレベルによる降雨減衰測定例(鹿島 2015/9/11)3 超高速衛星通信技術76 情報通信研究機構研究報告 Vol. 63 No. 2 (2017)
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