HTML5 Webook
86/168
3.2消防車両とWINDS小型車載局による車両間移動通信実験救援のため、緊急消防援助隊が被災地に向かう際の情報収集・情報共有を可能とするWINDS小型車載局と車両による車両間移動通信システムを提案した。本システムは、消防車両に簡易的に取り付け可能な無線機とOLSRv2 [6]による経路制御を行うルータ装置により構成される。車両前方と後方に指向性アンテナを備えたWi-Fi無線機を設置する。前方を端末(Station:STA)モード、後方をアクセスポイント(AP)モードとし、APは車両ごとに異なるチャネル設定にすることで、車両前方のSTAと車両後方のAPが自律的に接続しマルチチャネルのアドホックネットワークを構成する。北海道総務部危機対策局、北海道消防学校、江別市消防本部、北広島市消防本部、岩見沢地区消防事務組合消防本部の協力を得て、WINDS衛星を介して走行しながら通信が行える小型車載局車両と消防車両の計10台にこのネットワーク装置を設置し、北海道江別市の公道にて基礎的な実証実験を行った。その結果、車両を停車させた状態では、車両間の9割以上のノードペアにて10 Mbps以上の実効TCPスループットが得られたことが確認できた(表3)。また、走行しながらハイビジョン映像を車両間ネットワークと衛星経由でインターネットへストリーミング配信が行えることを確認した。図6に消防車両及びWINDS小型車載局を用いて実施した車両間移動通信実験の様子を、また、図7に先頭車両からの車両間ネットワークとWINDS経由でインターネットへストリーミング配信した映像を示す。3.3WINDSを用いた音声通話システムの音質評価WINDS回線と音声通話システムを利用し、電話網につないだ場合、意思疎通が可能か否かについて、音質評価を実施した。3.3.1音質評価ネットワークの構成音質評価のため構築したネットワーク構成を図8に示す。WINDS回線は再生交換中継方式の24Mbpsモードで構築し、小型車載局にはWi-FiのAPを設置した。被災地域にあるスマートフォンAから固定電話に電話をかけるための通信経路は、スマートフォンA⇔小型車載局Wi-FiのAP⇔WINDS⇔フルオート可図5 検出値と現地調査値の比較 表3 車両ペーアのTCPスループット図6 消防車両とWINDS小型車載局を用いた車両間移動通信実験の様子図7 先頭を走っている車両からのストリーミング映像のスクリーンショット82 情報通信研究機構研究報告 Vol. 63 No. 2 (2017)3 超高速衛星通信技術
元のページ
../index.html#86