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WINDS車載局を派遣し、災害用衛星通信システムを利用した非常通信網の構築と災害情報転送の公開実験を行った。同訓練は、土砂災害と地震の複合災害を想定し、防災関係機関及び民間協力団体の連携に重点を置いた実践的訓練であり、NICTは現地対策本部である宇和運動公園、災害救援物資の輸送現場及び災害拠点病院である西予市民病院の3箇所において、WINDSを利用し、救援活動の様子をYouTubeなどへリアルタイム中継すると同時に、愛媛県が今年度整備した「愛媛県災害情報システム(クラウド)」のため、回線を提供した(図14)。県関係者から、通信衛星を介した「愛媛県災害情報システム(クラウド)」運用が可能であることを確認した。さらに、他の手段がないとき、現地対策本部などにおける高速インターネット衛星回線は最後の砦であると評価された。WINDを用いた2016年熊本地震応急ネットワーク構築         2016年4月14日21時21分に発生した前震、2016年4月16日1時25に発生した本震以降、熊本県と大分県で相次いで地震が発生した。この一連の地震により、倒壊した住宅の下敷きになったり土砂災害に巻き込まれたりして、熊本県内で49人が亡くなっている。また、熊本県を中心に約10万棟の住宅被害が発生している[8]。また、この地震により、固定電話回線は最大2,100回線が被害を、携帯電話においては、伝送路断及び停電によるバッテリー枯渇が原因で最大350局が停波している[9]。一方、東日本大震災以降、NICTでは、仙台の耐災害ICT研究センターにおいて、災害に強いワイヤレスネットワークシステムを実現するため、広範囲に分散配置された無線端末が自立的に協調動作する無線ネットワーク技術や、衛星通信や無人機等といった移動体上のワイヤレスシステム、また、広範囲で通信の断切が発生した場合、より早く応急ネットワーク構築を可能とする研究開発を行っている。今回の熊本地震をうけ、NICTでは超高速衛星通信が可能なWINDS用小型車載局やメッシュネットワークシステム等の資機材と研究者を熊本県高森町へ派遣し、応急ネットワークを構築し、運用を実施した。5.1派遣の経緯、目的及び移動総務省から、NTT未来ねっと研究所に対して、被災現場で応急ネットワーク利用環境を形成するように打診あり、NICTとしても耐災害ICTセンターの活動として被災現地でのICT復旧技術の実証、また、SIPによる耐災害技術の実証として重要な取組と考え、5図14 災害情報伝達のイメージ873-3 災害対応に有効な衛星通信の開発と実証実験

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