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まえがき宇宙航空研究開発機構(JAXA)と情報通信研究機構(NICT)は、政府IT戦略の「e-Japan重点計画」における高度情報ネットワーク形成の研究開発の一環として、超高速インターネット衛星「WINDS」を開発した[1]–[3]。WINDSは、JAXA種子島宇宙センターから2008年2月23日、H-IIAロケット14号機によって打上げられた。WINDSの非再生中継回線を用いる622/1244Mbit/s高速ネットワークはNICTが開発した。NICT鹿島宇宙技術センターに設置した大型固定地球局(LET)と超高速小型地球局(SDR-VSAT)2機の3つの地球局が、622 /1244 Mbit/s高速ネットワークを構築するために開発された。また、622/1244 Mbit/sデュアルレート高速ネットワーク端末のための(128, 120)2ターボ積符号(TPC)を使用した高性能FECを持つ高速バーストモデムを開発した。WINDS打上げ後、NICTは、622/1244 Mbit/sデュアルレート高速バーストモデムの622/1244 Mbit/s伝送実験を行い、BER特性、UDP/TCPパケットエラーレート(PER)の測定を実施した。また、622 Mbit/sモードにて、3端末間においてTDMA衛星通信システムとして動作することを確認した。また、本システムにより、3D, 4K-HDTV伝送実験に成功した。本稿は、622 /1244 Mbit/sTDMA衛星通信システムの構成と性能及び高速バーストモデムを使用した622 /1244 Mbit/sTDMA衛星通信実験の結果について述べる。WINDS高速ネットワークシステム2.1高速ネットワークデジタルデバイド解消、インターネット基幹回線のバックアップ、通常は高速回線を有していない場所での可搬型地球局設置による臨時回線の利用を目的として、衛星回線による高速ネットワークの開発が進められた。WINDSの非再生TDMAモードで動作する高速ネットワークはSS(Satellite Switched)-TDMAシステムである。図1にシステム構成を示す。WINDS では、多数の 4 GHz帯アナログスイッチから構成されるスイッチマトリクス(SWMTX)を搭載し、受信ビーム/送信ビームの接続組合せパターンを時間的(最小時間間隔 2 ミリ秒)に切り替える方式を採用している。搭載SWMTX と高速バーストモデムの同期は、JAXA基準局で生成する155 Mbit/sリファレンスバースト(JRB)により維持される。このJRBは、再生中継で使用されるものと同様な155 Mbit/s、QPSK、誤り訂正符号はRS(255, 223)となっている。NICT局の1つが、受信したJRBに同期した622 Mbit/s非再生中継用リファレンスバースト(Winds RB : WRB)を送信する。他の地球局は、SWMTXと同期するために622 Mbit/s WRBのみを使用する。JRBは、再生中継TDMAのスロット割当情報を含み、WRBは、622/1244 Mbit/sTDMAのためのスロット割当情報を含んでいる。図2にTDMAフレーム構成を示す。WRB及びデータバーストの送信タイミングは、衛星と地球局の位置情報から伝搬遅延時間を計算し、123-4 622/1244 Mbit/sデュアルレート高速バーストモデムTDMA衛星通信実験大川 貢 赤石 明 浅井敏男 片山典彦 川崎和義 高橋 卓超高速インターネット衛星「WINDS」が、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と情報通信研究機構(NICT)により開発され、2008年2月23日、H-IIAロケット14号機によって打ち上げられた。WINDSの非再生中継回線を用いる622/1244 Mbit/s高速ネットワークシステムを構築するため、622/1244 Mbit/s速度切替型高速バーストモデム、大型固定地球局(LET:4.8 m径)、超高速小型地球局(SDR-VSAT:2.4 m径)を開発した。WINDS打上げ後、NICTは、高速バーストモデムを使用した622/1244 Mbit/s伝送実験を実施した。本稿では、WINDS衛星回線におけるBER特性、UDP/TCPパケットエラーレート(PER)の実験結果を示す。また、本モデムを使用し、622 Mbit/sモードにて、3端末間においてTDMA衛星通信システムとして動作することを確認した。また、本システムにより、3 D, 4 K-HDTV伝送実験に成功した。913 超高速衛星通信技術
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