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実社会行動と脳情報通信ヒトの社会はますます複雑・大規模ネットワーク化しており、社会行動を抜きに次世代の情報処理システムや脳情報通信を考えることはできない。したがって今後の研究開発においてはこれまで実験室で行われてきた実験に加えて、実社会の行動の背後に存在する脳情報を解読する必要がある。そのためにはどのような研究開発項目が重要になるだろうか。まず研究の基盤的データとして、実際の社会行動を反映した脳活動・行動ビッグデータが必要である。我々の研究グループではオンラインデータ収集システムを独自に構築し、大量の行動データ、性格テストデータを用いて脳情報処理モデルを作成し、同時に同じ被験者のSNSデータ及び脳活動・脳構造データを収集するプロジェクトを進めている(図4)。現在のネットワーク社会がヒトに与える影響には不明な部分も多く、このような脳活動・行動ビッグデータを用いたストレスや幸福度の脳メカニズムを知ることは極めて重要である。言うまでもなく実社会の社会行動は複雑であり、意識的処理と無意識的処理が複雑に絡み合っている。特に、無意識的な処理に強い自覚はなく、本人にアンケートをしても有効な答えは得られないことが多い。うつ病などの精神疾患において社会的ストレスが主要な要因となるが、この理由から原因であるストレスを早期に定量化するのは困難である。我々の研究例で示したようにこれら精神疾患に扁桃体など皮質下領域が深く関与する。また、購買行動においてもユーザーの行動が大規模アンケート調査と合わないことはよく知られた事実である。さらに、ソーシャルメディアにおける行動も無意識の間に他者から影響を受ける。これらの社会行動の背後に存在する脳メカニズム(特に無意識のもの)の解明が進めば、脳の状態から様々な予測が可能となり実社会の制度設計や情報通信システムに大4図4オンライン実験システムにより収集した大規模な行動データと脳情報処理モデル、性格テスト、ソーシャルネットワークデータ及び脳情報データ。実社会の社会行動に即した脳情報処理モデルの構築を目指す。図3不公平に対する扁桃体の脳活動パターンから現在と将来のうつ病傾向を予測。a: 被験者と提案者のお金の分け方に関する提案を受入れるか拒否するかを決める最終提案ゲーム。b: 最終提案ゲーム中の不公平に対する扁桃体/海馬の活動パターン。c: 各被験者の不公平に対する左扁桃体/海馬の活動パターンから現在(左)と1年後(右)のうつ病傾向を予測した結果、実測値(横軸)と予測値(縦軸)の間に正の相関が見られ予測が可能であることを示す。オンライン実験BehaviourBrainReal-world性格テストソーシャルネットワークのデータ(Twier)脳情報処理モデル脳情報データ abcT値152-2 人間の社会的行動を脳活動情報から解読し応用するための研究
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