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となる体内外無線通信技術に関する開発を行った。大容量体内外無線通信への要求として、他通信機器との干渉回避、高データレート、生体への安全性、などが挙げられる。特に、1,000 chといった計測では10Mbps以上の高データレート(スループット)が要求される。現在、医療機器ではMICS(medical im-plant communication service)を使った無線通信が用いられており、MICS専用の周波数帯が設けられているため、ほかの無線機器との電波干渉や、無線電波の生体への安全性といった点で優れているが、MICSを利用する機器はペースメーカのような高い通信レートを必要としないものを想定した規格であるため、数百kbps程度の通信性能が限界であり、超多点計測には適さない。高データレートという点では、既に世界中でWi-Fi(2.4 GHzや5.0 GHz)が利用されている現実もあり、高データレートも実現可能なため、医療現場にも積極的に活用されるようになってきている。しかしながら、世界中で活用されているがゆえに互いの電波干渉が避けられず、これを回避するには複雑な制御機構が必要になるなどの課題がある。超広帯域無線(Ultra-wideband、UWB)は無線ボディエリアネットワーク(WBAN)としてIEEE 802.15.6として規格化された通信であり、人体近辺や人体内の通信をサポートしている。UWBには超多点計測及び体内外無線に向けた複数のメリットがあり、その性質上100 Mbps以上の通信レートが可能で、広帯域通信であるために送信パワーが低く、生体への安全性に問題がないと同時に干渉の問題も抑えられ、数GHzという高い周波数帯を利用するため、アンテナのサイズが1 cm以下にできる。以上の利点から、我々はUWBが超多点計測システムの無線通信に適切であると考え、64 ch皮質脳波計測LSIの複数接続が可能な多重化回路と組み合わせて、最大4,096 chの皮質脳波計測が可能な超多点無線計測システムを開発した[7]。図4(a)に開発した4,096 ch無線計測システムを示す。広島大学、大阪大学と共同で開発してきた64 ch皮質脳波計測LSI[1]を活用し、8個のLSIを同時接続して512 ch計測可能なマルチプレクサモジュール8:1マルチプレクサ+ロジックUWB受信器32 mmECoG神経電極(計512ch)フリップチップ実装(c)LSI・神経電極一体型512chベースユニットREFMUXUWB送信器に接続FPC基板を8枚スタックUWB送信器(b)液体ファントムを用いた体内外無線通信模擬(a)4,096 ch 皮質脳波無線計測システム120 mm65 mm50 mmhelicalantenna15 mm20.7 mm64-ch LSIOKNGtoo neartoo far図4 開発した4,096ch皮質脳波無線計測システム36   情報通信研究機構研究報告 Vol. 64 No. 1 (2018)4 ブレインマシンインタフェース技術

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