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2.1fMRIスキャンから機能的脳ネットワーク脳ネットワークを記述及び理解する直接的な方法は、ネットワークグラフとして評価することである。脳機能の個体差が特定のネットワークトポロジーの指標の違いとして反映される。これらの特徴を利用することによって、疾患の分類が可能になる。この文脈に沿って手順を説明すると、まず、記録された個々の隣接ボクセルのfMRI時系列をROIに集約することによって、脳機能ネットワークが得られる。これにより、数万の記録ボクセル数から数百ROIまでの次元及び複雑さが低減される。その後、ROIの時系列間の類似度を相関係数で比較する(図1)。結果として得られる全てのROIの類似性行列は、被験者の機能的ネットワークを特徴付け、次いで、いくつかのノード単位のグラフ指標(例えば、次数、中心性)またはネットワーク全体に関するグラフ指標(例えば、assortativity、global efficiency)によって比較することができる。これらのメトリックの中で重要なものはモジュール性であり、ネットワークノードの固有のメソスケールのグループ化を、いわゆるモジュールに記述している(図1)。直観的には、ネットワークモジュールは、ランダムに接続されている場合よりも、互いにより密接に結合したノードのグループとして特徴付けることができる。したがって、高いモジュール性を有するネットワークでは、ノードは、同じモジュール内の他のノードと多くの相互接続リンクを共有するが、モジュールの外部のノードにはあまり密接に接続されない。モジュールは通常、個々の被験者のネットワークごとに個別に計算され、健常者群と患者群のすべての被験者で同時に計算される群単位のマルチスライス・モジュラリティ指標[6]を検討する。次に、各群のマルチスライス・モジュールを合意行列[7]に集約する。この合意行列は、マルチスライス・パーティションのそれぞれで2つのROIが同一モジュールに統計的にグループ化できる頻度を計算することによって得られる。特に、障害の原因となる特定の領域を認識することが困難である脳関連疾患では、ネットワークモジュールの解析によるメソスケール構造へのシステムの単純化は、障害の理解と治療に効果的である。詳細は2.2で説明する。2.2統合失調症のデータセット統合失調症は、約100人のうちの1人に発生する精神障害である。それは臨床医により症状から診断されるが、有効な検査または他の客観的診断方法はまだ確立されていない。36人以上の被験者からなる、2つの患者グループAとC及び2つの健常対照グループBとDについてモジュール分析を行った。グループAとグループBについては、異なる色でマークされた5つの特徴的なモジュールが見いだされた。全てのグループにおける被験者のモジュールを互いに比較し、図2に示す。健常対照グループBとDの両方において、脳の後頭部(背部)に単一の大きなモジュールが存在する。被験者が実験中に特定の作業を行っていないので、いわゆる「デフォルトモードネットワーク」が対照グループBとDにおいて活性化された。しかし、統合失調症グループAとCの同じ領域を見ると、この単一のモジュールは一般的に3つの小さなモジュールに分かれている。このことは、健康な人の安静時に通常活動する領域が統合失調症患者にとって適切に機能してい図1 脳機能ネットワークのモジュール推定[4]535-2 脳のネットワークから脳に触発された情報ネットワーク
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