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ないことを示唆している。2.3慢性背部痛に関する多施設研究痛みへ適応できない脳の処理機構は、多くの種類の慢性疼痛の根本的原因であると考えられている。実験データは、患者と健常被験者との間に構造的及び機能的な相違が幅広く存在することを示しており、これにより慢性疼痛は脳ネットワークの不調によって生じると考えられている。文献[5]では、3つの異なる研究施設(大阪、イギリスのケンブリッジ、アメリカのシカゴ)から選んだ健常者と慢性腰痛(疼痛)患者の2つの異なるグループを比較することにより、脳ネットワークのモジュールがどのように異なるかを調べた。図3は、疼痛患者グループ及び健常者グループの全ての被験者のネットワークグラフを示しており、そこから、同じ色が同じモジュール割当てに対応するマルチスライス・モジュール行列が生成される。そしてマルチスライス・モジュールを「合意行列」に集約する。この行列は、マルチスライス・パーティションのそれぞれで同じモジュールに2つのROIが割り当てられる頻度を単純に数えることによって得られる。得られた健常者グループの合意行列から疼痛患者グループの合意行列を差し引くことにより、図3の右上に示される「合意差分行列」が得られる。合意差分行列の大きな正の要素は、疼痛において高い合意が高いノード対を表す。すなわち、これらのノード対は、頻繁に疼痛患者グループについては同じモジュールにあるが、健常者グループの同じモジュールには存在しない。同様に、大きな負の要素は反対のケースを表す。すなわち、これらの図2モジュールの推定値の類似性(色で符号化された)[4]脳の後頭部の大きな青色領域(各スキャンの左側)は、デフォルトモードネットワークに対応するモジュールを示す。図3 マルチスライスのモジュール性と合意行列の計算パイプラインの概要 [5]54   情報通信研究機構研究報告 Vol. 64 No. 1 (2018)5 脳機能の理解と知見応用のための各種アプローチ

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