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プルに基づいて行われるからである。忠実度の高いスパイクベースの通信で、プロトコルの簡素化に対する要求をどのように満たすことができるか?答えの鍵は、信号の符号化にある。送信の各ビットに対して1つのタイムスロットを割り当てる従来の符号化方式とは異なり、スパイク間の時間間隔として値を符号化する。そのようなスキームの中で最もシンプルな形として、スパイクが連続して発生し、メッセージに関連するスパイク間の時間間隔に別のメッセージからのスパイクが入ると、何らかの形で検出できることを仮定する。図4は、このような符号化の一例を示している。送信者によってブロードキャストされたメッセージは、4つのスパイクからなる。これらのスパイク間の3つの時間間隔は全て等しくなければいけない。これらの間隔の等価性は、他のメッセージからのスパイクが介在していないかどうかを確認することに受信側で使用される。2つの連続する時間間隔が等しい場合、高い可能性で、それらは1つの同じノードのブロードキャストから発信されるので、この情報を使用してメッセージを復号することができる。しかし、2つの連続する間隔が異なる場合、少なくとも2つのメッセージが混在する。その場合、メッセージを抽出することができず、再度ブロードキャストされるまで待たなければならない。図4の符号化は、「誤り検出符号」の良い例である。連続するスパイク間の等間隔に基づいて、メッセージが正しいか否かを識別することが可能である。しかし、間隔の長さが等しくない場合、メッセージが正しくないと判断され、元のメッセージを抽出できなくなる。もう1つの優れた段階は、「誤り訂正符号」である。この場合、他のメッセージからのスパイクが介在していても元のメッセージを抽出することができる。近年、有限オートマトン理論をスパイクの領域に適応させ、スパイクのための誤り訂正符号を構築することに成功した。その結果得られるモデルは「スパイクオートマトン」[13]と呼ぶ。有限オートマトンのように、スパイクオートマトンは外部から入力を受け取るが、違いは、スパイクオートマトンはシンボルではなくスパイク間の間隔を入力として使用することである。スパイクオートマトンは、特定のパターンに同調されたパターン認識器の一種であるため、同調されたスパイクメッセージ以外の全ての介入スパイクメッセージは無視される。これは、ニューロンが特定のスパイクパターンに同調される傾向がある脳と類似していることと対応する。スパイクオートマトンを使用した結果、別のノードからメッセージを受信して復号するのに必要な時間が大幅に短縮された。誤り検出符号化では、ブロードキャストされたメッセージの衝突は再送信を必要とする。しかし、誤り訂正符号化を使用して、互いに衝突しても全ての元のメッセージを取り出すことができる。スパイクベースの通信及びノード間でのメッセージ送信のための様々な符号化をテストするために、最大コンセンサスアルゴリズム[14]を実行するArduinoマイクロコントローラ(図5)に基づいたプロトタイプを構築した。このプロトタイプでは、ノード間の通信にワイヤを使用しているが、現在はワイヤレスバージョンを構築中である。スパイクベースの信号に対する誤り検出符号化の代わりに誤り訂正符号化を使用することにより、収束速度が2桁向上することを確認した。図44つのスパイク(3つのスパイク間間隔)によるメッセージの符号化1,2及び3とラベル付けされた3つの隣接ノードによってブロードキャストされたスパイクは、ノードiによって受信される。垂直の矢印はスパイクを示し、それらの間のラベルはスパイク間間隔の長さを示す。ノードiは、異なるノードから受信したスパイクの組み合わせを受信し、ほとんどの場合、それらを区別することはできない。このため、ノードiによって受信されるいくつかのスパイク間間隔は、6とラベル付けされた間隔のように、単なる偶然に発生する。しかし、ノードiが等しい長さの2つのスパイク間間隔を連続して受信すると、対応するメッセージは1つのノードから発生する可能性が非常に高いため、メッセージは有効とみなされる[12]。56 情報通信研究機構研究報告 Vol. 64 No. 1 (2018)5 脳機能の理解と知見応用のための各種アプローチ
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