HTML5 Webook
61/102

あとがき本稿では、神経科学の計算上の側面と情報科学との密接な関連を扱ういくつかの研究プロジェクトを要約した。ネットワーク科学による脳ネットワークトポロジーの研究は、脳ネットワークを研究するための多数のツールの適用を可能にする。モジュールは、脳ネットワークの内部構造を明らかにするため、脳ネットワークの解析において重要な役割を果たす。特に、統合失調症のような障害の原因となる特定の領域を認識することが難しい場合、モジュール構造の分析によるシステムの単純化は、障害を理解し、治療するためにも有効である。現在、現代の機械学習技術をネットワーク解析とどの程度組み合わせることができ、神経疾患の分類において更に高い精度を達成できるかを評価する過程にある。主な目標のひとつは、経験のある臨床医でさえ見つけにくい脳データの神経障害の微妙なバイオマーカーを検出できるツールを開発することである。脳ネットワークのマクロレベルから神経発火のミクロレベルまでは大きなステップであるが、我々はその後者に触発され、スパイクのタイミングが低エネルギー消費、同期要件の柔軟性を達成及び動作の単純化するのに役立つ新しい通信プロトコルを開発するに至った。ただここに挙げたいくつかの要素は、速度と帯域幅を重視する従来の無線ネットワークでは達成が難しいことが多い。スパイクベースのプロトコルに最も適したアプリケーションは、小規模で安価なノードが大量に必要である状況下での応用例だろう。その場合、空間分解能を向上させることができるが、高い時間分解能でノード値を読み取る必要はない。典型的な用途は農業モニタリングであり、病気や害虫を適時に検出することが改善措置を講じるうえで非常に重要である。このような適時的な検出では、マイクロ秒の時間間隔で各ノードからのデータを収集する必要はない(むしろ、数分で十分である)が、異常な広がりが大規模なレベルに達する前に停止できるように、数メートル程度の空間分解能のデータが必要である。現在、無線のプロトタイプを開発中であり、スパイクベースの無線ネットワークに適したアプリケーションをさらに検討する予定である。謝辞ペパーとライプニッツは、日本学術振興会奨学金JP16H01719の支援を受けている。シーモアは、Well-come Trust (097490)及びArthritis Research UK (21357)の支援を受けている。4図5Arduino Megaボードに実装されたスパイクベースの最大コンセンサスアルゴリズムのプロトタイプ実現のスナップショット5つのノードは、破線で示されたワイヤによって互いに接続されている。ボード上の赤色と青色のLEDは、それぞれノードのブロードキャストとリスニングの状態を示し、ノード1,2,4,5はブロードキャスト、センターノード3は聴取している。白色LEDの強度は、ノードの値を示し、すべてがコンセンサスに完全に達すると、等しい最大レベルに達する。575-2 脳のネットワークから脳に触発された情報ネットワーク

元のページ  ../index.html#61

このブックを見る