HTML5 Webook
67/102
を必要とする視覚探索課題を遂行できる実験パラダイムを構築した(図7)。独自のスマートフォンアプリを開発し、実験参加者に1日3回(朝、昼、夜)、5分程度の課題を2週間取り組んでもらった。この中で、参加者の幸福度をスケール上の指標の位置で記録するとともに、心理学で広く知られているTreismanの視覚探索課題[12]の探索時間を記録した。この結果、幸福度が高いときは、ターゲットを探す時間が速いことが明らかになった[13]。これは、幸福度が高いときは、注意を向けられる広さが大きくなり、少ない数の注意シフトでターゲットを探すことが可能になった可能性を示している。3.4今後の展望ここで紹介したように、視覚注意は私たちが物を見る仕組みに大きな役割を担っている。また、この注意に幸福度のような人の感情が影響を与えていることも明らかになってきた。これについては、どのようなメカニズムで起こっているのか、脳活動計測や心理物理学的な研究で解明を目指していきたい。また、今後は、幸福度と注意機能が関係するという知見を基に、注意の状態をモニターすることで幸福度を推定し、うつなどの未病状態の推定技術の開発、さらには、注意のトレーニングによる幸福度の向上にも取り組んでいきたい。ここまでの項では、視覚モダリティにのみ着目した研究を紹介してきたが、脳は視覚以外にも様々なモダ図7 スマートフォンによる幸福度と注意の関係を明らかにする実験図6 MEGによる視覚注意実験の結果 (注意が向いているかどうかで低次視覚野のα波の活動が変化する)635-3 外界・身体状態の知覚及び脳におけるその情報統合・再構成に関する研究
元のページ
../index.html#67