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今後の展望脳機能計測技術においては、 BOLD効果を用いたfMRIをRFコイルと組み合わせることで、空間解像度や時間分解能の向上を図り、脳領域における大脳皮質層構造間での情報伝達機構の解明を行っていく。そのために、単一RFコイルよりも広い領域をカバーする単一RFコイルを複数配列したアレイ型コイルにRFシールドを組み合わせて開発に着手していく。BOLD効果以外の原理を用いた脳機能計測として、神経活動に伴い変化する脳内代謝物や神経伝達物質量を計測できるMRスペクトロスコピー(MR spectroscopy、以下MRS)を活用している。静磁場強度増大による感度の向上により、認知機能や様々な疾患に関与している抑制性神経伝達物質であるGABA濃度の計測に成功している。さらに、MRSの結果から脳温度情報を定量的に抽出することが可能であり、現在、脳活動に付随した代謝量の研究も進めている。dMRIによる白質線維束の位置や形といった情報伝達経路の情報に加えて、定量的MRIと呼ばれる手法を用いて神経組織密度などの白質の組織構造を調べ、脳機能計測で求めた活動領域を組み合わせたマルチモーダルな計測から線維束の情報伝達効率を推定する研究も進めている。謝辞ここで紹介した研究は、NICT 脳情報通信融合研究室、天野 薫主任研究員、番 浩志研究員、 脳情報工学研究室 春野 雅彦研究マネージャー、田中 敏子研究員、大阪大学大学院 生命機能研究科 藤田 一郎教授、大阪大学先導的学際研究機構 吉岡 芳親教授らのご協力により行われたものである。ここに深く感謝の意を表したい。また、紹介した研究はJSPS科研費15K06731、JP17H04684、JP17H04684、JP15J00412、ダイキン工業株式会社の助成を受けて実施された成果の一部に基づいている。【参考文献【1黄田育宏, “MRIの新しい可能性,” Clinical Neuroscience, vol.34, pp.660–663, 2016.2I. Kida, Y. Donoshita, and U.S. Choi, “Olfactory functional magnetic res-onance imaging in the human brain at 7 Tesla,” Proc ISMRM2018, pp.4552, 2018.3黄田育宏,“機能イメージングの現状と展望--- Non-BOLDイメージングとスペクトロスコピー, ” 月刊インナービジョン,vol.29, pp.27–30, 2014.4I. Kida,T. Ueguchi, Y. Matsuoka, K. Zhou, A. Stemmer, and D. Porter, “Comparison of diffusion-weighted imaging in the human brain using readout-segmented EPI and PROPELLER turbo spin echo with single-shot EPI at 7 T MRI,” Investigative Radiology, vol.51, pp.435–439, 2016.5U.S. Choi, H. Kawaguchi, Y. Matsuoka, T. Kober, and I.Kida,“Fast brain tissue segmentation based on MP2RAGE at 7T MRI,” Proc OHBM2018, pp.1686, 2018.6H. Takemura, C.F. Caiafa, B.A. Wandell, and F. Pestilli, “Ensemble Tractography,” PLoS Computational Biology, vol.12, no.2, pp.e1004692, 2016.7H. Takemura, A. Rokem, J.Winawer, J.D. Yeatman, B.A. Wandell, and F. Pestilli,“A major human white-matter pathway between dorsal and ventral visual cortex,” Cerebral Cortex, vol.26, no.5, pp.2205–2214, 2016.8H. Takemura, F. Pestilli, K.S.Weiner, G.A. Keliris, S.M. Landi, J. Sliwa, F.Q. Ye, M.A. Barnett, D.A. Leopold, W.A. Freiwald, N.K. Logothetis, and B.A. Wandell, “Occipital white matter tracts in human and macaque,” Cerebral Cortex, vol.27, no.6, pp.3346–3359, 2017.9H.Oishi, H. Takemura, S.C. Aoki, I. Fujita, and K Amano,“Microstructural properties of the vertical occipital fasciculus explain the variability in human stereoacuit,” bioRxiv, pp.288753, 2018.10S. Ogawa, H. Takemura, H. Horiguchi, M. Terao, T. Haji, F. Pestilli, J.D. Yeatman, H. Tsuneoka, B.A. Wandell, and Y. Masuda,“White matter consequences of retinal receptor and ganglion cell damage,” Investigative Ophthalmology and Visual Science, vol.55, no.10, pp.6976–6986, 2014.11松岡雄一郎, 黄田育宏,“7T-MRI送受信コイルの共振特性に対するシールドの影響,” 日本磁気共鳴医学会大会, LBP-43, 2018.竹村浩昌 (たけむら ひろまさ)脳情報通信融合研究センター脳機能解析研究室テニュアトラック研究員博士(学術)脳計測科学松岡雄一郎 (まつおか ゆういちろう)脳情報通信融合研究センター脳機能解析研究室主任研究員博士(工学)生体医工学、MRI、RFコイル、Interventional MRIChoi Uksu (ちょい うくす)脳情報通信融合研究センター脳機能解析研究室研究員Ph.D.(Medical Science)Ultra-high field fMRI黄田育宏 (きだ いくひろ)脳情報通信融合研究センター脳機能解析研究室主任研究員博士(理学)磁気共鳴医学,脳計測科学,神経科学4716-1 MRIを用いた脳計測手法の改善及び新規計測手法の研究開発

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