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アルーター用の仮想ネットワークを構築する機能を提供している。しかし仮想ノードが構成するネットワークトポロジは計算されたリンク遅延などを含んだ仮想的なものであり、シミュレータ同様、モバイル通信の検証などに精度を欠く。我々はCeforeを用いた現実的かつ大規模なCCN通信環境評価のため、CCNエミュレータ「Cefore-Emu」を開発し公開した [1][19]。Cefore-Emuは、(1)Linuxコンテナベースのネットワークエミュレータ方式により軽量に動作、(2)ネットワーク設定を容易にする設定ファイル及びその自動生成ツールの提供、(3)現実の物理ネットワークとエミュレータ内のネットワークを接続・融合したハイブリッド検証環境を実現などの特徴を持つ。以下では、それぞれの特徴について詳説する。Cefore-EmuはMininet-HiFi [20][21]というコンテナベースのネットワークエミュレータに基づいて開発されており、その軽量性、設定容易性、現実性を引き継いでいる。エミュレータ方式には主に仮想マシン方式とコンテナ方式が存在する。仮想マシン方式はそれぞれの仮想マシンで独立したOSを管理しOSレベルで挙動を再現する方式であり、コンテナ方式はハードウェアに導入されたOS(ホストOSと呼ぶ)と同一のOS上にコンテナと呼ばれる仮想ノードを生成する。コンテナ間ではプロセスグループやネットワーク空間が論理的に分断されているため、各コンテナを独立した計算機として扱える。コンテナはホストOSの計算資源やソフトウェアを直接使用できるため、OSごとに仮想化する仮想マシン方式より軽量に稼働させることが可能である。しかし、コンテナがホストOSの計算資源を共有するため、コンテナ間での計算資源の干渉が起こり得る。そこで、Mininet-HiFiはコンテナごとの計算資源(CPU・メモリ)も独立させる機能を有しており、これによってコンテナ間の干渉を防ぎ、実験結果の現実への忠実性を保証している [21]。次に、Cefore-Emuの設定方法及び動作に関して説明する。図7のように、ユーザーは最初に設定ファイルcefemu.confを作成する。これはノードとリンク及びノードの種類の定義(nodetype)から構成されている。本例では3ノード(h1、h2、h3)がキャッシュルーターs1を介して接続している(図7右トポロジ参照)。nodetypeはCeforeの設定ファイルを指定するための項目であり、キャッシュの有無や自作プラグインのパラメータを設定することができる。本例ではs1にcachenodeタイプを指定し、ルーターでのみキャッシュを行うように設定している。設定ファイルを作成した後は、cefemuコマンドを実行することで仮想ネットワークを起動できる。Cefore-Emuはノードへの接続用インターフェースとしてCommand Line Interface(CLI)を提供しており、任意の仮想ノード上でのコマンド実行や、Cefore-Emuの提供するネットワーク操作機能の利用を対話的に行うことができる。最後に、ハイブリッド実験環境について説明する。既述のとおり、シミュレータやエミュレータでは、ネットワーク状態、特に無線通信環境などにおける通信遅延やデータ欠損などの通信品質を評価する実験において、評価の精度に対する信頼性が問題になることが多い。そこでCefore-Emuでは、無線インターフェースを含む実際の物理インターフェースをエミュレータに接続し、エミュレータが構成する仮想的なネットワークトポロジと物理ネットワークを融合して実験評価できるハイブリッド検証環境を実現した。図8の例では、図7 Cefore-Emuの簡単な設定例とエミュレートされた仮想ネットワークh1s1h2h3100 Mbps[preferences][nodetypes]default: /home/user/minicefore/ceforecachenode: _ ./cache_csmgrd.conf_ _[hosts]h1: producer.shh2: consumer.sh ccn:/,s1h3: _ cpu=0.1 ccn:/,s1[routers]s1: ccn:/,h1 type=cachenode[links]h1:s1 bw=100h2:s1h3:s1cefemu.conf(Cefore-Emu用の設定ファイル)Cefore用の設定ファイルceforeplugincefnetd.confcsmgrd.confplugin.confcache_cefnetd.conf仮想ネットワーク(1) 作成cefnetdcefnetdcsmgrdcefnetdcefnetdエミュレートUserCefore-Emu(2) 起動(3) CLIから操作操作100   情報通信研究機構研究報告 Vol. 64 No. 2 (2018)6 ネットワークの効率的な資源配分を目指す研究開発

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