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Cefore-Emuを稼働させるサーバーが、Ethernet経由でPCと接続し、また2つのWiFiアクセスポイント(USBデバイス)とも接続している。この環境を用いることで、ニューヨークにあるPCから動画配信を行い、仮想的なインターネットトポロジを経由し、東京とパリにあるWiFiアクセスポイント経由で動画を受信しているCefore通信のようなシナリオを再現することが可能となる。このようなハイブリッド環境は、cefemu.confのノード設定に接続したい物理インターフェース名を記述するだけで構築できるため、大規模な模倣ネットワークと現実の無線通信を融合した実験が容易に行える。今後の展望ここまで、ICN/CCNの概要や特徴、NICTが取り組むICN/CCN研究や開発、参照実装などに関して説明してきた。ICN/CCNは次世代のネットワークアーキテクチャとして、IP通信が抱える様々な課題を克服するために、世界各国で研究開発が進められている。近年では、その基礎研究に留まらず、ベンダーやキャリアなどによる応用研究や実装も進められており、益々その実現が期待されている。今後の展望として、特に第5世代移動通信システム(5G)に関しては、5Gのコア技術のひとつとしてICN/CCN技術が含まれると考えられており、海外の大手ベンダーはそこにビジネスチャンスを見いだそうとしている。5Gでは物理ネットワークを「スライス」という論理的なネットワークに分割して運用することが可能となり、つまりIPとは独立したICN/CCNスライスを定義し、IPサービスと並行して、特定のICN/CCNサービスやアプリケーションをICN/CCNスライス上で実現できる。5Gの中心的なサービスとなるIoTや高速・大容量・超低遅延通信などは、正にICN/CCNが得意とするコア技術(マルチキャスト、マルチパス、サーバーレス通信、移動体通信(モビリティ))を必要とするサービスであるため、より品質の高いサービス提供が実現できると考えられる。キャリアインフラの視点では、既存のIPネットワークを全てICN/CCNに置き換えるという「ハードランディング」な考え方だけに固執するのではなく、部分的に、若しくはこれから作られていく新しいエッジコンピューティングやフォグコンピューティングにICN/CCN機能を融合させる方法も有効であろう。キャリアインフラ以外の技術展開に関しては、特定のネットワーク、例えば小規模なネットワークやエンタープライズネットワークなどでICN/CCNが展開されていく方向も考えられる。また、インターネット上の特定のコンテンツ配信、例えばマルチキャストやマルチパスを利用した4K/8Kレベルの高品位かつ低遅延なリアルタイム・ストリーミング配信や、時差通信機能を用いた耐災害ネットワークなど、アプリケーションレベル(オーバーレイ)でICN/CCNを利用していくのも効果的である。NICTでは、新しいネットワークアーキテクチャとして非常に大きな可能性を持つICN/CCNに対し、今後も様々な研究課題を克服し、研究のレベルアップとオープンソースの成熟によりその優位性を実証していく。またICN/CCNを更に発展させ、ネットワークを単なる「(データを流すだけの)土管」から、より知性と機能を持つインフラストラクチャとして進化させ、未来の通信サービスを創造し、豊かな社会への貢献を目指す。【参考文献【1“Cefore,” Available at: https://cefore.net/.2P. Seeling and M. Reisslein, “I. want. pixels. (Entering the age of 4K),” IEEE Potentials, vol.33, no.6, pp.27–30, 2014.3“Cisco Visual Networking Index: Global Mobile Data Traffic Forecast Update,” 2014–2019 White Paper.4K. Matsuzono, H. Asaeda, and T. Turletti, “Low Latency Low Loss Streaming using In-Network Coding and Caching,” Proc. IEEE Infocom’17, Atlanta, United States, May 2017.5K. Matsuzono and H. Asaeda, “NRTS: content name-based real-time streaming,” Proc. IEEE CCNC, Las Vegas, United States, Jan. 2016.6G. Carofiglio, M. Gallo, L. Muscariello, M. Papalini, and S. Wang, “Optimal multipath congestion control and request forwarding in infor-mation-centric networks,” Proc. IEEE ICNP, Oct. 2013.7X. Yin, V. Sekar, and B. Sinopoli, “Toward a principled framework to design dynamic adaptive streaming algorithms over HTTP,” Proc. ACM Hotnets, Oct. 2014.8K. Matsuzono and H. Asaeda, “NMRTS: content name-based mobile real-time streaming,” IEEE Communications Magazine, vol.54, no.8, Aug. 2016.9“CCNx,” Available at: https://github.com/ProjectCCNx/ccnx.10“Named Data Networking,” Available at: http://named-data.net/.11“CICN,” Available at: https://wiki.fd.io/view/Cicn.12朝枝仁, 松園和久, “情報指向ネットワーク技術におけるプロトタイプ実装と評価手法,” コンピュータソフトウェア, vol.33, no.3, pp.3–15,日本ソフトウェア科学会, 2016年8月.6図8 Cefore-Emuによるハイブリッド実験環境例1016-2 情報指向型ネットワーク技術
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