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まえがきスマートフォンやコンピュータのような専用端末のみならず、人々の身の回りに存在する「モノ」(センサー、家電、ロボット、クルマ等)がネットワーク接続し、安全で効率化されたICTサービスを街の至るところで提供可能とすることで、高い水準の社会生活を可能とするいわゆるIoT(Internet of Things)の実現に対する期待は大きい。IoTにおいては、一般に、「モノ」をネットワーク接続し、データの収集や分析等をクラウドと連携しながらサービスを実現する形態がとられる。センサーネットワークとクラウドをつなぐIoTを実現する上では、広域に配備されたモノが生成するデータをクラウドに送信するための 「トラヒックの課題」、モノとクラウドとの間の距離が長いことに起因する「応答遅延の課題」があげられる。これらの課題を解決可能とするアーキテクチャとして、端末上、あるいは、端末に物理的に近いネットワーク装置(エッジ)等に、計算処理を実行可能な計算リソースを設け、クラウド上の処理の一部をそれらで実行する「階層化クラウドアーキテクチャ」が提唱され、様々な要素技術の研究開発が進められている。いわゆる『エッジコンピューティング(またはフォグコンピューティング)』と呼ばれるコンピューティング形態である。本稿では、近年注目を集めるIoTを活用したアプリケーション(以下、IoTアプリケーション)の例を概観するとともに、著者らが研究開発に取り組んできたIoT向けエッジコンピューティング技術について述べる。IoTアプリケーション2.1IoTアプリケーションの分類図1は、IoTアプリケーションの大まかな分類を示している。IoTサービスにおける最初の段階は、「可視化(Visualization)」である。センサー等から観測データを収集し、収集された観測データを必要に応じて分析したうえで、人が目で見て理解できる表示形式に変換し、提示する。あるいは、観測データの処理結果を付加情報として別の情報と組み合わせて提示する。次の段階は、「アクチュエーション(Actuation)」である。ICTサービスとして、何らかの分析や判断に基づき、実世界にある端末に対する通知や、実世界にあるモノの制御を行う。アクチュエーションを含む12図1 IoTアプリケーションの分類可視化Visualization(遠隔監視)モノ→人自動化Automation(予測・最適化)モノ→モノアクチュエーションActuation(対処・通知)人→モノ将来のIoT(Internet of Things)においては、多数のモノ(センサー、家電、ロボット、クルマ等)が生成する膨大なデータをリアルタイムに収集・分析し、実世界にあるモノを制御する高度な情報サービスの実現が期待される。本稿ではこうした情報サービスの実現に適したアーキテクチャとして注目されるエッジコンピューティング技術や関連技術について概観するとともに、著者らが研究開発を進めているIoTエッジコンピューティング技術について紹介する。In the future IoT (Internet of Things), advanced ICT services that control physical things accord-ing to the analysis results of collected real-time data generated by a large number of things (such as sensors, appliances, robots, vehicles). In this paper, we explore Edge Computing technology and related works that attract attention recently as fundamental technologies that are suitable for such future ICT services. We also introduce our currently ongoing projects on research and devel-opment of IoT Edge Computing Technology.6-3 IoTエッジコンピューティング技術6-3IoT Edge Computing Technology寺西裕一 山中広明 河合栄治Yuuichi TERANISHI, Hiroaki YAMANAKA, and Eiji KAWAI1036 ネットワークの効率的な資源配分を目指す研究開発

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