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ジコンピューティングシステムとしては、こうした状況変動に応じてリソースを階層化クラウド上にいかに確保し、サービスを継続するかが課題となる。IoT エッジコンピューティング我々は、前節で示した技術課題に対処し、IoT向けのエッジコンピューティングを実現するための基盤となる技術の研究開発を進めている。本節では、我々が提案するアーキテクチャ及び提案アーキテクチャを構成する要素技術について述べる。4.1IoTエッジコンピューティングのアーキテクチャ我々は、分散配置された多数のデバイスからのデータを低遅延で処理するための仮想的なエッジコンピューティング環境を同一のハードウェア環境上に複数同時に提供可能な基盤を実現するインフラ層と、そのインフラ層を用いて上位IoTサービスに必要なデータ処理を実行するプラットフォーム層から成る2階層のアーキテクチャを提案している。図3は、それぞれの階層が持つ大まかな機能要素と、プラットフォームレイヤPaaS (Platform-as-a-Ser-vice)とインフラストラクチャレイヤ IaaS (Infra-structure-as-a-Service)の構成を示している。4.2IoT エッジコンピューティングインフラストラクチャ本節では、インフラストラクチャレイヤに相当するIaaSの機能要素について述べる。前記、エッジコンピューティングにおける「設備コストの課題」の解決を図るものである。IoTサービス事業者にとっては、物理インフラ所有者から取得した仮想化されたエッジリソース(以下、VM)について、許容できる遅延内で無線基地局を通してエンドユーザデバイスと通信可能であることが要求である。一方、物理インフラ所有者にとっては、特に物理サーバの消費電力を抑え、インフラ運用コストを最小化することが要求である。これらを実現するには、無線基地局から許容遅延内で通信可能なエッジサーバの空き状況に応じて、IoTサービス事業者の顧客となるエンドユーザデバイスのサービスに必要最低限のVM台数を見積もり、配置することが必要である(図4)。既存研究におけるアプローチの1つ文献[4]では、インフラ所有者が物理ネットワークトポロジとエッジサーバの設置場所を公開した上で、IoTサービス事業者が設置場所ごとに要求VM台数を直接指定するアプローチが取られている。このアプローチでは、インフラ所有者がIoTサービス事業者に開示する情報が膨大になる。さらに、省電力性の観点で望ましくない場所へのVM要求を回避するため、IoTサービス事業者とインフラ所有者の間で複雑なネゴシエーションが必要になる。このため、IaaS-PaaS間のインタフェースでは、膨大かつ複雑な情報交換を強いられる問題がある。既存研究における別のアプローチ[5]で は、無線基地局とエッジサーバの組合せをあらかじめ決定し、動作中に変更することはない。無線基地局に接続するユーザ数予測やネットワーク上でのエッジサーバ設置コスト、許容遅延等を考慮して、無線基地局とエッジサーバ設置場所の組合せを決定する。無線基地局に接続したエンドユーザデバイスに対しては、常に組合せになっているエッジサーバを用いてサービスを提供する。このため、IoTサービス事業者とインフラ所有者のやり取りは簡素にできる。ただし、このアプローチでは、想定する許容遅延を小さくすると、できるだけ無線基地局の近くにエッジサーバを設置する必要があるため、無線基地局とエッジサーバ設置場所が1対1の組合せになる。このため、全体の稼働VM数が多くなり、消費電力が大きくなる問題がある。4図4 VM要求に必要な想定ユーザ数の例合計接続ユーザ数:4想定ユーザ数︓4想定ユーザ数:4※1つの無線基地局におけるピーク時の同時接続ユーザ数:4想定ユーザ数:4想定ユーザ数:4++3つの無線基地局いずれからも許容遅延内で通信可能なサーバが存在する場合複数の無線基地局から共通して許容遅延内で通信可能なサーバが存在しない場合= 12無線基地局間をハンドオーバ1076-3 IoTエッジコンピューティング技術
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