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(TBPS)によって定義する前提のもと、データフローの定義を変更することなく、ネットワークや計算機の過負荷状態に応じてデータフローの構造を動的に変化させる動的データフロー処理プラットフォームを提案している[11]。4.3.2動的データフロー処理図6は、データフローの例を示している。図は、2つのアプリケーションを含むグラフの例である。このグラフは、映像から人の領域を切り出す「人物領域検出」のコンポーネントがビデオカメラからの入力を受信し、「特徴抽出」のコンポーネントで特徴を取り出し、「照合」のコンポーネントがマッチングを行い、特徴が合致した場合に通知を行うというアプリケーション(入退室管理)と、「人物領域検出」の出力数を「カウント」のコンポーネントで数え、時間ごとに記録するアプリケーション(混雑度ログ)を含んでいる。データフローを実行する際、動的な状況変動に対応するには、プロセスの実行位置の変更やプロセスを実行するリソース数の増減が必要となる。こうした変更にデータフローを対応させるため、提案プラットフォームでは、TBPSの送受信データに『 index 』と呼ぶ属性を追加する。indexは一次元のスカラー値である。publisherは、トピックに加えてindexを付与してデータをpublishする。subscriber は、topicとindexの範囲を指定してsubscribeする。図7 は、データフローのグラフの更新動作を示している。この例では、topic Aが cs から cd へのデータ送信に対応している。この例ではデータが、0.3, 0.8, ... を index として持っている。図上では、cd は [0, 1.0) に subscribe しているため、全てのデータはcdに到達する。図下では、処理リソース数の変化によって、あらたにあて先コンポーネントcd’が追加され、subscribeするindexが[0, 0.5)と[0.5, 1.0)に分割されている。これによって処理が振り分けられる。これらindexの割当てはプラットフォームのレベルで実行されるため、データフローを定義する利用者は、動的な状況変動に対応したデータフロー構造の変化を意識する必要はない。また、提案プラットフォームでは、このルーティング機構を構造化オーバレイを用いて実装することで、各処理のコンポーネントにおけるあて先を、クラウドに問い合わせることなく自律的かつ効率的に実行可能とした。4.3.3実装本研究では、実装に筆者らが提案している双方向キー順序保存型オーバレイネットワーク Suzaku [12] を用いてindexに基づく振り分け機構のプロトタイプを実装した。Suzaku は、多数の連続したキーが挿入・削除された場合も最大検索ホップ数がほぼO(log2 n)に抑えられ(nはノード数)、スケーラビリティ、Churn 耐性に優れている。Suzaku はオーバレイフレームワーク PIAX [13] 上に実装されており、プロトタイプもPIAXを用いて実装した。プロトタイプは、基本機能の実装を完了している。Suzakuは、ベースとなるノードの追加削除のアルゴリズムとしてDDLL[14]を用いており、定期的な更新によるスタビライズ動作を必要とせず、短時間で構造変更を行うことができる。この特徴は、データフローの構造変更に対する追従性の実現に適している。おわりに本稿では、近年注目を集めているIoTアプリケーションを概観し、それらに適した新たな将来コンピューティングアーキテクチャとして注目されるエッジコンピューティング技術や関連技術について述べた。また、将来のIoTエッジコンピューティングに向けた要素技術の研究開発活動の取組を紹介した。本稿で示したインフラストラクチャ、プラットフォームは、NICTが提供するテストベッドに実装し、様々なアプリケーションに適用して有効性を検証していく予定である。【参考文献【1GillottResearch,“The Business Case for MEC in Retail: A TCO Analysis and its Implications in the 5G Era,” GillottResearch Inc., June 2017.2N. Takahashi, H. Tanaka and R. Kawamura, “Analysis of process as-signment in multi-tier mobile cloud computing and application to edge accelerated web browsing,” Mobile Cloud 2015, pp.233-234, March. 2015.3Open Edge Computing Initiative, “Open EDGE Computing,” http://openedgecomputing.org/, 参照, Aug.7.2018.4D. Krishnaswamy, R. Kothari, and V. Gabale, "Latency and policy aware hierarchical partitioning for nfv systems," NFV-SDN 2015, pp.205-211, Nov. 2015.5A. Ceselli, M. Premoli, and S. Secci, "Cloudlet network design optimiza-tion," 2015 IFIP Networking Conference, pp.1-9, May 2015.7図7 データフローグラフの更新動作1096-3 IoTエッジコンピューティング技術
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