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光ファイバ伝送の容量機器と空間分割多重現在の光ネットワークは階層化されており、都市圏ではメトロネットワーク、全国規模ではコアネットワークを介して大規模な情報が流通している。これらのネットワークにインターネットトラヒックの主要部分が収容されているため、その全体的な傾向を反映した性能向上が求められている。つまり、現在も年率数10%で増加し続けるインターネットトラヒックに対応するための継続的な能力向上が不可欠である。これまでの光通信では、利用可能な光の帯域が非常に大きいにもかかわらず、情報を生成する電子機器の速度が電子回路によって律速されてしまうため、様々な種類の多重化技術を用いてそれらの情報信号を束ねて大容量化し、遠方に伝送するのが常であった。光パルスのタイミングをずらすことで複数の時間スロットを時間軸上に並べた、時分割多重(Optical Time-Divi-sion Multiplexing: OTDM)は最初期の多重化技術である。その後、光の波長を識別する技術及びそれらを一括で増幅する技術の登場に伴い、それぞれ異なる信号を収容した複数の波長を同時に伝送する波長分割多重(Wavelength-Division Multiplexing: WDM)は、利用可能な帯域の大幅な増加によって、インターネットの情報爆発を下支えした。さらに、光ファイバ中の光の振動方向(偏波)を用いて多重化を行う偏波分割多重(Polarization-Division Multiplexing: PDM)は上記の多重技術をほぼ2倍に容量拡大することが可能である。WDMが普及した後は、ディジタルコヒーレント受信技術が開発されたことにより、かつてのコヒーレント変調方式が見直され、1シンボル(パルス)あたり複数のビットを表現可能な多値変調方式が台頭しつつあった。これらの多重化方式はそれぞれ直交しており、併用することで伝送容量を増加させることが可能である(図1)。しかしながら、既存の光ファイバそのものに物理的な限界があるのではないかという懸念が、昨今の国際的な共通の関心事である[1]。その傍証として、既存の標準光ファイバ(SSMF)を用いた伝送容量記録は、概ね150テラビット毎秒あたりでとどまっている[2](図2)。これらは主として光ファイバの非線形性によるものと考えられているが、非線形性による悪影響は、情報容量の増加に伴い、光ファイバに挿入される光パワーの増大によって、より大きく顕在化する。このような制限に対して、単純にファイバの敷設数を増やすとい1図1 光通信における多重化方式時間周波数(波⻑)偏波位相空間時分割多重OTDM波⻑分割多重WDM多値変調⽅式QPSK, QAM空間分割多重SDM偏波多重PDM既存の光ファイバ通信インフラの容量限界を打破するための新たな多重技術の研究開発状況を俯瞰する。State-of-the-art R&D of SDM in order to overcome physical limit of conventional optical fiber communication infrastructures is overviewed.3 コアネットワークの大容量化を目指す研究開発3R&D of Optical Fiber Transmission to Increase the Capacity in Core Network3-1 空間分割多重通信技術概要3-1Summary of Space-division Multiplexing Fiber Transmission淡路祥成Yoshinari AWAJI93 コアネットワークの大容量化を目指す研究開発
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