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【革新的光ファイバ技術の研究開発】(2010~2012年度:課題146)「既存の標準光ファイバの物理的限界を突破し、5~10 年後にペタビット級光通信を実現するため、現在の光ファイバの限界を定めている制限要因をクリアする「革新的光ファイバ」に関しての基礎研究(探索的研究)を行うことを目的とする」ことが本プロジェクトの趣旨である。マルチコアファイバやマルチモードファイバはそれ以前から存在していたが、抜本的な伝送容量拡大という目的に向けて、次世代の光通信インフラを担う信頼性の高い新型ファイバ技術の探索を行うことが重要である。通信キャリア、国内主要ファイバメーカー、大学からなる研究チームが発足し、実に様々な光ファイバの設計・試作・評価が行われた。現在のマルチコアファイバの基礎的技術の多くは、本プロジェクトが発端となって研究が進展している。また、本プロジェクトから派生したマルチコアファイバを用い、NICT自らが世界で初めてファイバ1本あたり100テラビット毎秒を超える伝送記録を樹立している[3]。【革新的光通信インフラの研究開発】(2011~2015年度:課題150)「今後10年間で既存の光通信インフラから3桁以上の情報容量の向上を実現するため、マルチコアファイバ用光増幅技術、マルチコアファイバ用接続技術、超多重伝送技術の研究開発を行うことを目的とする」、本プロジェクトは課題146に遅れること1年後に開始された。課題146ではファイバの設計には特段制限を設けずに新型ファイバの研究開発を進めていたが、その多くはマルチコアファイバに関するものであり、従来にない光ファイバを製造してもそのままでは光通信システムを構築できない。課題150では、特にマルチコアファイバに焦点を当て、マルチコアファイバ同士あるいはSSMFとの接続技術の研究、マルチコアでの増幅技術の研究、そしてそれらを用いて伝送システムを構築するとともに、マルチモードの活用まで視野を広げて、伝送特性評価を行うマルチコア・マルチモード伝送技術の研究、の3本の柱で構成されている。本プロジェクト中に、更なる伝送容量拡大に成功し、ファイバ1本あたり1ペタビット毎秒を超える伝送記録[4]、及び容量・距離積で1エクサビット毎秒・kmを超える伝送記録が達成された[5][6]。【革新的光ファイバの実用化に向けた研究開発】(2013~2017年度:課題170)「(先行NICT委託研究の)優位性・知見を継承するとともに、実用化・標準化に向けた研究開発を加速し、基幹系等の中・長距離伝送に使用可能なマルチコアファイバ設計指針の確立・高信頼化の推進が第一の課題である。また、その一環としてマルチコアマルチモードファイバ(学会等では SDM 光ファイバなどと呼ばれることもある)の実用性の可否を技術的に検討することが第二の課題である」という位置づけの下に、課題146の後継として開始されたのが本プロジェクトである。課題146では可能性を広げる探索的研究を行い、連携する課題150においてその極限的な伝送能力がつまびらかとなってきていた。課題170においては実用化に向けた重要な課題である、量産性や信頼性、標準化戦略などが主要な目標とされた。すなわち、「ファイバ当たりペタビット級の潜在的伝送能力」と「基幹系適用(100km 級)を想定していること」の二大条件が課されることとなった。また、先行する課題150にて基礎検討を行ったマルチモード伝送方式についても、本格的な研究が開始され、マルチコアファイバとマルチモードを融合した研究開発も大幅に進展した。図4 NICT委託研究「革新的光ファイバ技術の研究開発」(課題146)概要マルチコア・光ファイバ図5 NICT委託研究「革新的光通信インフラの研究開発」(課題150)概要Tx1Tx2Rx1Rx2MMFモード1モード2モード3Tx3Rx3(1)マルチコアファイバ用光増幅器(2)ファンアウトカプラ(3)モード多重伝送概念図(マルチモードファイバ)マルチコア光増幅器マルチコアファイバ113-1 空間分割多重通信技術概要
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