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まえがき年率40%に達する勢いで増大する通信トラヒックを支える光ファイバ通信の伝送容量は、たゆまぬ技術開発により堅調に増加してきたが、従来光ファイバでは、その入力光パワー限界などの物理的制約がもたらす容量枯渇の可能性が指摘されている。この容量枯渇問題を未然に回避するべく、マルチコアファイバを中心とした空間分割多重技術(Space Division Multiplexing: SDM)の研究分野開拓に我が国が先べんをつけてきた。SDMに関する最初の委託研究プロジェクトとして、2010~2012年度には「革新的光ファイバ技術の研究開発(i-FREE)[1]」が実施された。本プロジェクトでは、既存光ファイバの制限要因をクリアする「革新的光ファイバ」に関しての基礎研究が行われ、マルチコアファイバの設計及び製造方法と並行して、その性能評価方法が研究開発され、全く新しい伝送媒体を実現するための要素技術の探索的研究が行われた。i-FREEに引き続き、2011~2015年度には、「革新的光通信インフラの研究開発(i-ACTION)[2]」が実施された。本プロジェクトでは、マルチコアファイバ光伝送システムを実現するために必要となる、マルチコアファイバ用光増幅技術、マルチコアファイバ用接続技術、超多値伝送技術の研究開発が行われ、マルチコアファイバ/光増幅器を用いた大洋横断級の長距離伝送も実証された[3][4]。これら2つの委託研究プロジェクトに引き続き、「革新的光ファイバの実用化に向けた研究開発(i-FREE2[5][6])が2013~2017年度に実施された。本プロジェクトでは、先行プロジェクトの優位性・知見を継承するとともに、実用化・標準化に向けた研究開発を加速し、基幹系光伝送システム等の中・長距離伝送に使用可能なマルチコアファイバ設計指針の確立・高信頼化を推進すること及びマルチコア・マルチモードファイバの実用性の可否を技術的に検討することを目的に実施された。本委託研究プロジェクトは、2つの課題で構成されており、本稿では、そのうちの、KDDI総合研究所、古河電気工業、住友電気工業、東北大学により実施された「ペタビット級空間多重光ファイバの実用化・大容量化技術[5]」の概要及び主要成果を紹介する。1既存光ファイバの容量限界を打破する技術として、2013年からの5年間、NICT委託研究プロジェクト「革新的光ファイバの実用化に向けた研究開発(i-FREE2)」において、ペタビット級の伝送性能を有するマルチコアファイバに関する研究開発を実施した。本稿では、本研究開発の概要を述べるとともに、その代表的な成果として、モード多重伝送技術を併用することにより10ペタビット級の潜在的伝送能力を有することを実証した伝送実験を紹介する。We had conducted research on multi-core fiber with a potential capacity over Peta bit/s in a NICT consigned research project, “R&D of Innovative Optical Fiber and Communication Technolo-gy,” from 2013 to 2018. In this paper, we review the project and describe a transmission experi-ment using multi-core multi-mode fiber to demonstrate a feasibility of 10 Peta bit/s transmission as one of major achievements in the project.3-2 空間多重光伝送技術3-2Space Division Multiplexing Transmission Technology3-2-1 革新的光ファイバの実用化に向けた研究開発 ~ペタビット級空間多重光ファイバの実用化・大容量化技術~3-2-1R&D of Innovative Optical Fiber and Communication Technology— Ultra Large Capacity Transmission Technology Around Peta bit/s —森田逸郎Itsuro MORITA153 コアネットワークの大容量化を目指す研究開発

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