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ペタビット級空間多重光ファイバの実用化・大容量化技術の研究開発 NICT委託研究課題「ペタビット級空間多重光ファイバの実用化・大容量化技術」では、以下の4つの小課題について研究開発を行った。① 大容量マルチコアファイバ伝送技術(KDDI総合研究所)② マルチコアファイバのコア密度拡大・母材大型化・高速測定技術(古河電気工業)③ マルチコアファイバの高信頼化・高精度化とモード多重技術応用(住友電気工業)④ 大容量マルチコアファイバの性能評価技術(東北大学)以下では、各小課題の概要と主要成果について述べる。2.1大容量マルチコアファイバ伝送技術本小課題では、モード間の結合を最小限に抑圧した弱結合モード多重伝送システムの伝送性能を評価し、実用的なモード多重伝送技術を確立すること及び、モード多重伝送技術をマルチコアファイバに適用したマルチコア・マルチモードファイバを用いたマルチペタビット級の潜在的伝送性能を実証することを目標に研究開発を実施した。弱結合モード多重システムに関しては、損失及びクロストークを低減可能なマッハツェンダ干渉計型モード多重分離器を考案・開発し、その有効性を確認した。さらに、C帯及びL帯において25 GHz間隔で波長多重した336チャネルの偏波多重四相位相変調(QPSK)信号(伝送速度:76.5 Gbit/s)を10モード多重し、48kmの伝送実験を行った。伝送路中でのモード結合の制御を行わない強結合モード多重伝送では、10モード多重伝送のためには20×20のMIMO信号処理が必要になるが、弱結合モード多重伝送方式を用いることにより、2×2もしくは4×4のMIMO信号処理のみを用いて、257 Tbit/sの大容量伝送が可能であることを実証した[7]。さらに、他の小課題の成果も活用してマルチコア・マルチモードファイバを用いた大容量伝送実験を実施し、マルチペタビット級の潜在的伝送性能を実証した。本伝送実験の詳細については次章で述べる。2.2マルチコアファイバのコア密度拡大・母材大型化・高速測定技術本小課題では、マルチコアファイバのコア密度拡大を達成し、単一モードを用いたマルチペタビット級伝送が可能な100 km級マルチコアファイバの実現及び母材大型化、高速測定技術の開発を通じて、マルチコアファイバの実用化への道筋を立てることを目標に研究開発を実施した。マルチコアファイバのコア密度拡大技術に関しては、高コア密度かつ実用的なマルチコアファイバの設計を確立し、100 km級ファイバの実現性を確認するとともに、高コア密度を維持しつつ実用性を重視したクラッド径125 µmファイバを収容した1,000コア相当のケーブル試作を行い、8.4コア/mm2の空間密度の達成見通しを得た(図1)[8]。マルチコアファイバ母材の大型化技術に関しては、外付け法、一体化線引法、異形管法の3種の手法の検討を行い、穿孔法をベースとした一体化線引が精度的には最良であることを明らかにし、コア位置ずれ1.5µmを実現した。さらに、本製法の改善可能箇所を調査し、0.5 µmの位置精度が得られる見通しも得た。マルチコアファイバの高速測定技術に関しては、ファンアウトを活用した測定法について19コアまでの検証を行い、高速化と十分な精度が得られることを確認した。さらに、マルチコアファイバに重要なスキュー測定技術も確立した。2.3マルチコアファイバの高信頼化・高精度化とモード多重技術応用本小課題では、実用的なマルチコアファイバが満たすべき構造や光学特性の明確化、マルチコアファイバにモード多重伝送を適用するマルチコア・マルチモードファイバの試作・検証及びマルチコアファイバ間の接続損失を低減するためのコア配列高精度化技術の確立を目標として研究開発を実施した。高信頼マルチコアファイバの開発に関しては、ルース型のマルチコアファイバケーブルを試作し、機械試験・光学特性さらに伝送特性に何ら問題が生じないことを明らかにした。マルチコア・マルチモードファイバの開発では、2図1 試作した超高密度ケーブル[8]16 情報通信研究機構研究報告 Vol. 64 No. 2 (2018)3 コアネットワークの大容量化を目指す研究開発
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