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まえがきネットワークサービスの多様化や携帯電話サービスの高速化に伴い、基幹系のトラフィックは年率数十%で増加している。一方、光通信網で広く用いられているシングルモードファイバ(SMF)の伝送容量は約100 Tbit/sが限界と推定されており、2020年代後半には基幹系ネットワークに必要な伝送容量がSMFの容量限界を超えると考えられている[1]。そこで近年、SMFの容量限界を克服するため、空間分割多重(SDM)技術が高い関心を集めている。SDMは1心の光ファイバに複数の光パスを構成し、従来の時分割多重、波長分割多重に加え、空間を多重軸として用いることで、光パスの数に応じた大容量化を図ることができる。SDMは大別して、マルチコアファイバ(MCF)を用いたコア多重と、複数の伝搬モードを利用するモード多重に分けられる。2011年にはMCFを用いた世界初の100 Tbit/sを超えるSDM伝送実験が報告され[2]、2013年には1 Ebit/s・kmに及ぶ容量距離積が実現されている[3][4]。また高効率なMCF光増幅器、MCFに対応した接続技術や光コネクタなど、SDM伝送システムの実現に必要な周辺技術も精力的に検討が進められている。一方、モード多重は同一コア内に複数の光パスを構成できるため、空間多重密度及び伝送容量を飛躍的に増加できると期待される。特に近年、光マルチインプット・マルチアウトプット(MIMO)技術によるモード間クロストークの補償が提案されたことにより、光MIMOを用いたモード多重伝送実験が数多く報告されている。さらに、モード多重とコア多重を組み合わせた数モードマルチコアファイバ(FM-MCF)による超高密度SDM伝送も検討され、光ファイバ1心に100以上の空間パスを有するFM-MCF [5]–[7]や、FM-MCFを用いた10 Pbit/s超の伝送実験[8]も報告されている。しかしながら、これまでのMCFの報告例ではファイバ長が数十km以下に限られており、実際の光通信システムの構築を考慮すると、長手方向に十分な均一性と信頼性を有する100 km超級のMCFの製造が必要である。またFM-MCFにおける複数のモードを効率的に利用するには、各モードの伝送特性の評価技術1将来の超大容量光伝送基盤の実現に向け、空間分割多重(SDM)技術が世界的に高い関心を集めている。ここでは100 Pbit/s・km伝送用マルチコアファイバ技術と標準化指標の確立及びコア多重とモード多重の融合による伝送容量拡大ポテンシャルの明確化、の2点を目的としたSDM技術の研究成果について報告する。The space division multiplexing (SDM) technology has been receiving increasing attention in the world to realize future ultra large capacity transmission system. In this paper, we report the some outputs for the SDM technology in a view of two points, one is the development of multi-core fiber technology for 100 P bit/s-km transmission and standardization roadmap, the other is the observa-tion of potential for the much larger transmission capacity by mixing core division multiplexing with the mode division multiplexing.3-2-2 革新的光ファイバの実用化に向けた研究開発 ~マルチコアファイバ技術と標準化指標の確立~3-2-2Research and Development of Innovative Optical Fiber and Communication Technology— Development of multi-core fiber technology and standardization roadmap —松井 隆 中島和秀 永島拓志 中西哲也 安間淑通 竹永勝宏相曽景一 荒井慎一 齊藤晋聖 國分泰雄 大橋正治Takashi MATSUI, Kazuhide NAKAJIMA, Takuji NAGASHIMA, Tetsuya NAKANISHI, Yoshimichi ANMA, Katsuhiro TAKENAGA, Keiichi AISO, Shin-ichi ARAI, Kunimasa SAITO, Yasuo KOKUBUN, and Masaharu OHASHI213 コアネットワークの大容量化を目指す研究開発

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