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や、ファイバ中におけるモード間結合の振る舞いなどについても明確化する必要がある。さらに、MCFのコア数・コア配置・ファイバ外径などの設定指針については明確なコンセンサスが得られておらず、将来の標準化を見据えた指標の考え方を明らかにしていく必要がある。本研究開発ではSDMによる超大容量伝送基盤の実現に向けて、100 Pbit/s・km伝送用MCF技術の確立と、FM-MCFによる大容量伝送ポテンシャルの明確化に向け検討を行った。また、将来のMCF標準化に向けた標準指標の策定を進め、マルチベンダ間の相互接続性について検証した。高品質・長距離MCF製造技術図1にMCFの母材製造方法を示す。MCFの製造では一般的に、図1(a)に示す孔開け法が多く用いられる。孔開け法ではガラス母材を穿孔し、そこにコアに相当するガラス部材を挿入・一体化することでMCF母材を作製する。孔開け法はコア位置の自由度も高く技術蓄積も大きいが、穿孔工程は機械加工条件によって制約され、母材の大型化に課題がある。図1(b)に示すクラッド後付け法はコア部材を任意の形状に配列した後にクラッド領域を一括で形成する方法である。クラッド後付け法が実現できれば、機械加工の工程を経ずに柔軟なコア配置のMCFを製造することができ、製造距離や品質の改善につながると考えられる。ここでは孔開け法における母材大型化と高品質化並びにクラッド後付け法によるMCF製造の実現性について検討を行った。2.1孔開け法によるMCF母材の大型化孔開け法では、穿孔における加工装置の制限や穿孔表面の凹凸による損失増が母材大型化の課題となる。そこで孔開け法における製造プロセスの最適化を行い、MCF母材の大型化について検討した。図2はMCF母材の断面図と損失特性の評価結果である。作製したMCF母材の断面構造は図2(a)に示すとおりである。母材寸法は長さ1,000 mm、直径86 mmであり、200 km超の素線に相当する。図2(b)は製造したMCFの損失特性の評価結果である。伝送損失は各コアの平均で0.192 dB/kmと、母材大型化による伝送損失の悪化は見られなかった。作製されたファイバ長は244 kmと、一連長で200 km以上の長尺なMCFが製造できたことが確認できる[9]。またコア間距離の長手方向の変動は±1 µm以下であり、長手方向に良好な均一性を有する長尺MCFの製造が実現されている。また孔開け法の生産効率の向上に向け、新たにコア挿入線引法を提案した。図3にコア挿入線引法の概略図を示す。コア挿入線引法ではコア部材とクラッド部材を線引き炉で一体化しつつファイバ化することで、従来の孔開け法におけるコア部材とクラッド部材の一体化工程を省略し、効率的に長尺なMCFが製造できると期待される。ここでコア挿入線引法ではコア部材2図1 MCF母材の製造技術。(a)孔開け法、(b)クラッド後付け法孔開用ドリルツール⽯英⺟材コアロッド外付け・焼結コアロッドガラス微粒⼦(スート)ロッド配置図2 孔開け法による長距離MCF製造(a)母材構造(b)試作結果86 mm4 mm23 mm050100150200250300Loss [dB]Length [km]244 km22   情報通信研究機構研究報告 Vol. 64 No. 2 (2018)3 コアネットワークの大容量化を目指す研究開発

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