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とクラッド部材との界面に空隙が存在するため、構造パラメータや光学特性の長手方向の安定性や機械的な信頼性に影響する可能性がある。本検討ではこれらの影響の検証とプロセスの最適化を行い、200 km超級のMCF製造の実現性を確認した[10]。上述のように、孔開け法における母材の大型化を図り、長手方向における均一性の高い高品質なMCFを、従来よりも1桁以上長い数百 kmにわたり製造する技術を実現した。2.2クラッド後付け法によるMCF製造技術の確立ここではクラッド後付け法として、Over-cladding Bundled Rods(OBR)法と粉末成形法について検討を行った。図4に検討した2種類のクラッド後付け法の製造工程を示す。図4(a)のOBR法では、コア部材を任意の配置で束ね、両端にダミーのガラスロッドを溶着し固定する。その後、外付け法(OVD法)によりガラス微粒子(スート)を周囲に堆積させることでクラッド部を形成し、MCF母材を得る。OVD法は汎用のSMF母材の作製にも用いられることから、既存設備を流用でき母材の大型化・長尺化も期待できる。図4(b)の粉末成形法では、コア部材を石英ガラス管の中に任意の形状で配置した後、石英ガラス粉末を充填して線引き用粉末充填体を作製する。粉末充填体を減圧雰囲気中で加熱することで、MCF母材とし、その後MCFを得ることができる。粉末成形法は高いコア配置の自由度と母材の大型化の両立が期待できる。本検討ではそれぞれの製造方法についてMCF製造の実現性について検討し、50 km超のMCFの作製に成功した[11][12]。また伝送損失やコア間クロストーク(XT)の劣化は見受けられず、コア間距離の長手方向の安定性も良好であり、高品質なMCF製造への適用性を確認した。またOBR法は、図5(a)に示すように複数の円筒状のコア材を束ねる際に生ずる空隙を意図的に制御することで、隣接するコア間に空孔を有するMCFを実現することができる[13]。図5(b)に試作した空孔付きMCFの断面及びXTの測定結果を示す。コア間に空孔を付与することでXTを低減できることが知られているが、ここではOBR法の製造工程の特長をうまく活用することで、穿孔加工を行うことなく空孔付きMCFを実現した。作製した空孔付きMCFでは、空孔無しのMCFに比べ約10 dBのXT改善が得られることを確認した。図3 コア挿入線引き法排気ダミー管ジャケット管コアロッド線引炉(コアロッド、ジャケット管を一体化しながら紡糸)図4 検討したクラッド後付け法結束旋盤加工クラッドデポジション脱水・焼結結束具コア材ハンドル棒(a)Over-claddingBundledRods(OBR)法ダミーロッド(b)粉末成形法233-2-2 革新的光ファイバの実用化に向けた研究開発 ~マルチコアファイバ技術と標準化指標の確立~
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