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上記の結果より、機械加工を必要としないMCF母材の製造技術を世界で初めて検討し、高品質なMCFの製造が可能であることを示した。さらに、OBR法の特長を活かした空孔付き低XT-MCFの実現性も示した。コア多重とモード多重の融合による空間多重密度の極限追求先に述べたとおり、コア多重とモード多重を組み合わせたFM-MCFにより、空間パスと伝送容量の飛躍的な増大が期待できる。モード多重伝送で高次モードを空間パスとして利用するためには、高次モードも含めた解析技術の確立やファイバ伝搬中の振る舞いの解明、各モード特性の高精度な評価技術が不可欠となる。ここでは、高次モードの解析手法と評価技術並びにモード間結合特性の振る舞いについて検討するとともに、FM-MCFによる高空間密度化のポテンシャルについて検討した。3.1高次モードの解析と評価技術モード多重伝送ではファイバ中のモード間群遅延差(DMD)が伝送特性及び受信機の設計に大きく影響し、DMDを最小化するには、光ファイバコアの屈折率が中心から外周方向に向かって曲線的に減少するグレーデッド・インデックス(GI)構造を採用することが有効であることが知られている。さらに、FM-MCFではモード数の拡張に伴うXTの劣化も問題となり、XTの劣化を低減するためには、屈折率構造が異なるコアを配列したり、隣り合うコア間に低屈折率領域を設定したりする手法が用いられる。本検討では図6(a)に示すトレンチ(低屈折率層)付きGI型屈折率分布を用い、空間パス数及び空間多重密度の最大化について検討した。ここで単純にクラッド径を太くするだけでは空間パスの密度が大きくならないため、空間多重密度を比較する指標として、次式で定義されるSMFを基準とした相対コア多重指数(RCMF)を用いた。RCMF = 2∑_2_ D、DSMはそれぞれFM-MCFとSMFのクラッド直径、Aeff_nとAeff_SMはそれぞれFM-MCF及びSMFの各モードの実効的な伝搬領域の面積である。ここで、一般的なSMFのDSMとAeff_SMは、それぞれ125 µm及び80 µm2である。図6(b)はクラッド径とRCMFの関係を示す。ここでは長距離伝送への適用を考慮し、基本モードの面積はSMFと同等の80 µm2、コア間XTは-30 dB/100 km以下であることを設計条件とした。図中の青、緑及び紫のプロットは、それぞれ各コアのモード数を2LP(3モード)、4LP(6モード)及び6LP(10モード)としたときの計算結果を示し、同一モード数内の5個のプロットは、多重コア数を左から順7、12、19、27及び37とした場合に相当する。図6(b)から、モード数が一定の場合、コア数を増やしてもクラッド径が太くなるためRCMFの改善量は小さく、RCMFの改善には各コアのモード数を増やすことが効果的であることが分かる。ここでクラッド径の太径化は機械的信頼性の劣化を生じ、一般的な光ファイバケーブルへの実装を考慮すると250 µm以下のクラッド径が望ましいことが報告されている[7]。クラッド径を250 µm以下とした場合、4LPモード以上のコアを用いることで100チャネル以上、また3図5 OBR法による空孔付きMCFの作製-80-70-60-503840424446•外径125 μm•波長1550 (nm)•MFD(at 1310 nm)8.2-8.8 (μm)コア間距離(m)コア間クロストーク(dB/km)本製法空孔付きファイバ空孔なしファイバ孔開け法孔開け法本製法空孔無しファイバコア部材スペーサ(a) 母材イメージ(b) コア間距離とクロストーク(XT)の関係24   情報通信研究機構研究報告 Vol. 64 No. 2 (2018)3 コアネットワークの大容量化を目指す研究開発

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