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本検討ではSMFの100倍以上の空間多重密度(RCMF>100)となるFM-MCFの実現性について検討した。図6に示したとおり、約100のRCMFを得るためには6LPモードの活用が必須となる。ここでは空間多重密度の最大化のため、図9に示す三角形状のコア配置である12コア構造で設計・試作を行った。試作したFM-MCFはクラッド径217 µmであり、1心の光ファイバに120の空間パスを有する。RCMFは約100であることを確認し、100以上の空間パスと100倍以上の空間多重密度を世界で初めて同時に達成した[20]。以上より、FM-MCFの最適化設計を踏まえ100以上の空間パスかつSMFの100倍以上の空間多重密度となるFM-MCFを初めて実現した。試作結果より、FM-MCFによるSMFの100倍以上の伝送ポテンシャルが期待できる。MCFの標準化指標と相互接続検証コア間XTはMCFに固有かつ重要な伝送特性であるが、仮にXTの要求条件を固定したとしてもコア数や配列の組合せは無限に考えることができ、光ファイバの標準化に不可欠な相互接続の条件を明確化することは難しい。一方、1本の光ファイバ母材から作製できるファイバ長はクラッド径の2乗に反比例して変化する。例えばクラッド径が250 µmの場合、標準的なクラッド径(125 µm)と比較して製造可能な光ファイバの長さは4分の1に減少してしまう。このため、現在の光ファイバと同等の製造性を実現するには、ファイバ製造技術そのものの革新が必要となる。ここで光ファイバの製造性及び既存技術との親和性を考慮すると、光ファイバのクラッド径と被覆径を重要な標準指標として考えることができる。図10にクラッド径と被覆径を指標とするMCF標準の考え方を示す。標準クラッド径を採用したMCFは、製造性を損なわず既存の光ケーブルや光接続部品をそのまま活用することができ、第1の標準として早期の実用化が期待できる。さらに、各コアでSMFとの光学互換を担保することにより、既存の伝送システムとの併用を考えることができるうえ、標準クラッド径に配置可能なSMF互換のコア数は、実用的なXTレベルを考えると4~5個に限定できる[21][22]。また近年、被覆径を標準的な250 µmから200 µmに縮小したSMFの利用が広がりつつある。被覆径の縮小をMCFに応用すると、被覆径を既存標準の235~265 µmとしたまま、クラッド径を125 µm以上に拡張するオプションも考えられ、実際に標準被覆径を有する8コアファイバも検討されている[23]。このようにクラッド径及び被覆径を指標とし、将来的にはモード多重も加味することで、空間多重数の増加を考慮した段階的な標準化議論が推進できると考える。本研究開発では関連するNICT委託研究(課題146「革新的光ファイバ技術の研究開発」、150「革新的光通信インフラの研究開発」、188「空間多重フォトニックノード基盤技術の研究開発」)と連携し、産学官によるMCFのマルチベンダ間相互接続検証をこれまで計3回実施してきた。2013年には世界初のMCF相互接続検証を行った。7コア構造のMCFを用いて総長50 kmのマルチベンダ伝送路を構築し、MCFの融着接続、マルチコア増幅技術と併せてSDMによる大容量伝送基盤のコンセプトを世界に先駆け実証した。2015年には6コア構造のMCFと高効率なマルチコア光増幅技術を用い、光コネクタによるPlug & Play形式のSDMシステム4図11 MCF相互接続伝送路の構成試作したMCF107 kmMCF105 kmMCFMCF光増幅器104 kmMCFMCF光増幅器MCF光増幅器125 μm標準クラッド径かつSMFと光学互換のMCF高効率なクラッド励起型MCF光増幅器コア励起クラッド励起標準部品を活用したMCFコネクタMU型コネクタSC型コネクタ図10 クラッド径と被覆径を指標とするMCF標準125±0.7μm235~265μm既存SMF標準MCF標準I標準クラッド径MCF標準II標準被覆径&拡大クラッド径273-2-2 革新的光ファイバの実用化に向けた研究開発 ~マルチコアファイバ技術と標準化指標の確立~
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