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の実現性を示した。2017年には標準クラッド径を採用したMCFを用いたマルチベンダ間の相互接続伝送路を構築し、NICTが保有する大容量伝送実験設備を活用し、既存技術との親和性に優れた大容量SDM伝送のコンセプトを実証した[24]。図11に相互接続伝送路の構成を示す。この相互接続伝送路では、標準クラッド径を採用したMCFと、高効率なMCF光増幅器、MCFコネクタを組み合わせたフルSDM伝送路を構築した。ここではクラッド径及び光学特性が従来のSMFと完全互換であるMCFを、同一仕様の下3社で試作し、意図的にマルチベンダ間接続になるようにMCFを融着接続し、3つのスパンを構築した。スパン長は100 km以上であり、各スパンの平均損失は接続損失を含み0.21±0.02 dB/kmと、従来のSMFを用いた伝送路と同等の損失特性が得られた。上記の相互接続伝送路及びMCF光増幅器、MCFコネクタを用いて、100 Tbit/s超級の大容量伝送特性について検証した。ここではCバンド全域で多重したWDM信号を用い、256 Gbit/s×116波長×4コア伝送を行った。316 kmのSDM伝送路を伝送後の受信信号は全コア・全波長チャネルで良好な伝送品質を示し、トータルで118.5 Tbit/sの大容量伝送特性が確認できた。この伝送容量は標準外径MCFでは世界トップの容量である。またここでは伝送帯域としてCバンドのみを用いたが、Lバンドまで拡張することを考えると伝送容量は約2.7倍となり、約100 Pbit/s・kmの容量・距離積が得られる。上記の結果より、標準クラッド径を用いたMCFによる大容量伝送のコンセプトと、標準クラッド径を考慮した相互接続伝送システムの実現性が確認された。標準クラッド径を採用したMCFは製造性に加え、既存の光ケーブルや接続部品を活用できるなど既存技術との親和性が高く、SDM技術の早期展開と国際標準化の加速を促す有望な要素技術のひとつとして期待できる。むすび本研究開発を通じ、MCFの高品質・長尺化や高密度SDMファイバ、標準クラッド径MCFなど、SDM技術のポテンシャル明確化と早期実用化の礎となる多くの成果が創出されてきた。特にSDM技術の早期展開に向け、標準クラッド径を採用したMCFを提案し、その相互接続性及び大容量伝送特性を実証した。しかしながら標準クラッド径MCFの標準化・実用化には、SMFと同等の信頼性や量産性の実現や実環境を勘案した特性検証が必須となる。またFM-MCFは更なる超大容量化のポテンシャルが実証されたが、モードの制御技術をはじめとする周辺技術についても検討すべき課題が多く残されている。これらの検討を通じ、世界に先駆けてAll Japanによる超大容量SDM伝送基盤が実現されることが期待される。謝辞本研究はNICTの委託研究「革新的光ファイバの実用化に向けた研究開発」の一環及び「革新的光通信インフラに関する研究開発」並びに「空間多重フォトニックノードに関する研究開発」との連携で行われたものである。またMCFの相互接続と大容量伝送実験に当たり指導いただいたNICTの足立樹泰企画室室長並びにフォトニックネットワークシステム研究室の平木貢専門研究技術員に感謝申し上げる。【参考文献【1T. Morioka, “New generation optical infrastructure technologies: “EXAT initiative” towards 2020 and beyond,” Proc. OECC, FT4, 2009.2J. Sakaguchi, Y. Awaji, N. Wada, A. Kanno, T. Kawanishi, T. Hayashi, T. Taru, T. Kobayashi, and M. Watanabe, “109-7Tb/s (7x97x172-Gb/s SDM/WDM/PDM) QPSK transmission through 16.8-km homogeneous multi-core fiber,” Proc. OFC, PDPB6, 2011.3K. Igarashi, T. Tsuritani, I. Morita, Y. Tsuchida, K. Maeda, M. Tadakuma, T. Saito, K. Watanabe, K. Imamura, R. Sugizaki, and M. Suzuki, “1.03-Exabit/skm Super-Nyquist-WDM Transmission over 7,326-km Seven-Core Fiber,” Proc. ECOC, PD3.E3, 2013.4T. Kobayashi, H. Takara, A. Sano, T. Mizuno, H. Kawakami, Y. Miyamoto , K. Hiraga, Y. Abe, H. Ono, M. Wada, Y. Sasaki, I. Ishida, K. Takenaga, S. Matsuo, K. Saitoh, M. Yamada, H. Masuda, and T. Morioka, “2 x 344 Tb/s Propagation-direction Interleaved Transmission over 1500-km MCF Enhanced by Multicarrier Full Electric-field Digital Back-propagation,” Proc. ECOC, PD3.E4, 2013.5J. Sakaguchi, W. Klaus, J.-M. D. Mendinueta, B.J. Puttnam, R.S. Luis, Y. Awaji, N. Wada, T. Hayashi, T. Nakanishi, T. Watanabe, Y. Kokubun, T. Takahata, and T. Kobayashi, “Realizing a 36-core, 3-mode Fiber with 108 Spatial Channels,” Proc. OFC. Th5C.2, 2015.6K. Igarashi, D. Souma, Y. Wakayama, K. Takeshima, Y. Kawaguchi, T. Tsuritani, I. Morita, and M. Suzuki, “114 Space-Division-Multiplexed Transmission over 9.8-km Weakly-Coupled-6-Mode Uncoupled-19-Core Fibers,” Proc. OFC, Th5C.4, 2015.7T. Sakamoto, T. Matsui, K. Saitoh, S. Saitoh, K. Takenaga, T. Mizuno, Y. Abe, K. Shibahara, Y. Tobita, S. Matsuo, K. Aikawa, S. Aozasa, K. Nakajima and Y. Miyamoto., “Low-loss and Low-DMD Few-mode Multi-core Fiber with Highest Core Multiplicity Factor,” Proc. of OFC, Th5A2, 2016.8D. Soma, Y. Wakayama, S. Beppu, S. Sumita, T. Tsuritani, T. Hayashi, T. Nagashima, M. Suzuki, H. Takahashi, K. Igarashi, I. Morita, and M. Suzuki, “10.16 Peta-bit/s Dense SDM/WDM transmission over Low-DMD 6-Mode 19-Core Fibre across C+L Band,” Proc. ECOC, Th.PDP.A1, 2017.9福本良平, 安間淑通, 竹永勝宏, 愛川和彦, “孔開法による200 km超の4 コア長尺マルチコアファイバの作製、” 信学総大, B-10-9,2017.10永島拓志, 林哲也, 中西哲也, 佐野知巳, “ロッドインチューブ線引法によるマルチコア光ファイバの生産性の改善,” 信学技報, EXAT2017-14, 2018.11福本良平, 安間淑通, 竹永勝宏, 愛川和彦, “クラッド一括合成法による低損失マルチコアファイバの作製,”信学ソ大, B-10-6, 2017.12荒井慎一, 松本成人, 八木健, “粉末成形技術を用いたマルチコア光ファイバー,” 信学技報, OFT2017-57, 2018.13S. Nozoe R. Fukumoto, T. Sakamoto, T. Matsui, Y. Amma, K. Tsujikawa, 528 情報通信研究機構研究報告 Vol. 64 No. 2 (2018)3 コアネットワークの大容量化を目指す研究開発
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