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division multiplexing)光ネットワークにおける容量限界を超えるために、マルチコア光ファイバやマルチモードを用いた空間分割多重(SDM: Space division multiplexing)技術の導入が検討されており、大容量SDM–WDM光ネットワークの研究開発が盛んに行われている。マルチコア・マルチモード光ファイバ伝送では、現在、10.16 Pbpsの光信号伝送が実証されている[6]。光パケットスイッチネットワークにおいても、空間多重技術により複数の空間チャネルを束にした光パケットを構成することで、更なるデータ速度の向上が見込まれる。このため、空間多重光パケット用の高速な経路切替処理が可能な光スイッチシステムの実現が期待されている。我々は、多数の空間・周波数資源から構成される空間・周波数スーパーチャネル光パケットを一括して光交換処理する空間・周波数スーパーチャネル光パケットスイッチング方式を提案した[7]。本方式は、スーパーチャネル及びジョイント光スイッチングの概念を基本としており、OPSシステムを構成するハードウェアの簡素化や制御プレーンにおける処理負荷低減に貢献する。また、空間・周波数スーパーチャネル光パケットは空間・周波数領域では粒度が荒くなるが、時間領域にて細粒度を実現できるため、SDM–WDM光ネットワークにおいて多粒度の光チャネルを提供することができる。また、空間多重によるパイロット信号伝送も可能であり、デジタル信号処理の負荷を軽減することが可能である[8]。本稿では、考案した空間・周波数スーパーチャネル光パケットフォーマットや新たに開発した3種類の空間多重用光スイッチについて紹介する。また、最近、空間多重用光スイッチを用いて従来の光パケット交換のデータ速度の世界記録を3年ぶりに4倍以上更新する、53.3 Tbpsの光パケットスイッチング実験に成功し[9]、その後、83.3 Tbpsの更なる記録更新を達成した[10]。図1に光パケットスイッチング技術の進展を示す。本稿では、53.3 Tbpsの光パケットスイッチング実験の結果について述べる。空間・周波数スーパーチャネル光パケット及び空間多重用光スイッチシステム光パケットの更なる大容量化のために、空間・周波数スーパーチャネル光パケットを提案した。図2に、空間・周波数スーパーチャネル光パケットのフォーマットを示す。光パケットは、マルチコア光ファイバのコア数M、波長多重数Wの場合、M × Wの光ペイロードから構成される。光ペイロードはマルチコア光ファイバのコアをそれぞれ伝送する。光ペイロードの1つに、宛先アドレスやパケット長情報を含んだヘッダ信号が付加される。また、光ペイロードが伝送されるコアとは異なるコアを使用して、パイロット信号の付加が可能である。パイロット信号を用いることで、自己ホモダイン検波が可能であるため、受信機のデジタル信号処理の負荷を低減することができる。さらに、この空間スーパーチャネル光パケットを波長軸に拡張展開することで、空間・周波数スーパーチャネル光パケットとして使用できる。ここではコアごとにW波長分の光ペイロードが追加されている。例えば、1つの光ペイロードのデータレートを10 Gbpsとすると、空間・周波数スーパーチャネル光パケットのビットレートはM × W × 10 Gbpsとなる。図3に、空間・周波数スーパーチャネル光パケットに対応したOPSシステムの基本構成を示す。Nはシステムに接続された入出力ポート用のマルチコア光ファイバの本数を示す。また、Mはマルチコア光ファイバ1本あたりのコア数を示す。また、Lは光バッファにおけるマルチコア光ファイバ遅延線の本数を示す。OPSシステムは、スイッチコントローラ(ヘッダ処理装置、スケジューリング装置を含む)、M個のコアの光ペイロードを一括してスイッチング可能な1 × Nマルチコア一括光スイッチ、N × 1光バッファから構成される。N × 1光バッファは、1 × Lのマルチコア一括光スイッチとL本のマルチコア光ファイバ遅延線からなる。スイッチング時の動作内容について述べる。各ポートに入力された光パケットから、ヘッダ信号を含む光ペイロードが分離され、ヘッダ処理装置で受信される。ヘッダ処理装置にてヘッダ信号の中の宛先アドレスが認識処理され、光パケットの出力ポートが決定される。ヘッダ処理装置の制御信号により、転送先の出力ポートの光スイッチのみON状態になり、光パケットを通過させる。一方、別のポートから入力された光パケットが同タイミングで出力ポートに転送される場合、事前に衝突可能性がスケジューリング装置によって解析され、衝突する可能性がある場250T40T30T20T10TData rate of packet060T2.56T 70T201780T90T53.3T12.8Tyear83.3Tbps6.5 time in 3 years[4]2019201320152011[5][9][10]図1 光パケットスイッチングにおける光パケットのデータ速度の進展32 情報通信研究機構研究報告 Vol. 64 No. 2 (2018)3 コアネットワークの大容量化を目指す研究開発
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